多頭飼育崩壊は、何も家の中で起きるものではありません。2023年9月宮城県仙台市太白区では、「外の多頭飼育崩壊」ともいえる事態が起きてしまいました。
猫たちに餌を与えていたのは、50代の男性。元は母親と二人暮らしだったといいますが、母親の他界後に玄関へ餌を撒くようになったそうです。当然ながら、ご近所トラブルに発展し、過去には警察が出動するまでの騒動に。
届いた悲痛な声を受けTNRを
それでも近所の人たちは、猫たちを排除したいわけではありません。猫たちをどうにかしてあげたいと考え、保護猫の譲渡会を開催する同じく仙台市のTさんのもとへSNSを通じてDMを送ります。
「このままなら、猫も人も不幸になるんじゃないか」
こう近所の人たちは悩んでいるよう。
Tさんが急いで現場に駆けつけると、想像以上の猫がいました。原因である男性は、近所の人たちから「危険人物」と目されており、話を聞くこともできません。なので、隣の家に捕獲器を設置し水面下でことを運びました。保護した猫は避妊・去勢手術を施し、人に慣れている子はそのまま譲渡会で新しい家族を待ち、人慣れが難しい子は元の場所に戻します。
足がカックンする顔の大きな猫
猫の保護は大詰めを迎えあと数匹となった時、遠くからこちらを見つめる猫がTさんの目に飛び込みます。顔はやけに大きいものの、体は傷だらけ。動きもなんだかぎこちないのです。歩く度に足がカックンしています。
この猫は既に去勢手術が終わっていたものの、傷が気になったため、再度捕獲を決めます。猫の近くにおやつの入った捕獲器を置くと、すぐ入ってくれました。近くでよく見ると、顔にも傷があります。
「あなた、喧嘩に弱いのね」
すぐ病院に連れていき、体の隅々まで診てもらいました。分かったことは、脚のカックンは喧嘩の時に噛まれてバイキンが入り、その影響ではないかと獣医師から告げられました。
さらに、猫エイズのキャリアだということも分かりました。
Tさんはこれを聞き、譲渡は難しいだろうと考えました。それでもこの状態の猫を元の場所に戻すわけにはいきません。顔の大きなこの猫は、保護主のSさんの家に行くことになりました。
お利口さんで愛嬌があるから名前は「ドラえもん」に
Sさんの家で療養生活に入った猫は、他の猫と喧嘩をすることもなく穏やかに過ごします。ご飯はちゃんと食べますし、動物病院から出された抗生物質も嫌がらずに飲むんです。この姿にSさんたちは感心しました。
加えて愛嬌がありますから、Sさんやボランティアさんたちから「ドラえもん」の愛称で呼ばれるように。名前をもらったドラえもんくんは、名前を呼ばれるたびにゆっくり瞬きするんです。
足の傷は思ったよりも重症で、かなり長い間抗生物質を服用することになりましたが、2023年の除夜の鐘が聞こえるころには完治。少し足は引きずっていますが、もう元気といって良いでしょう。
このドラえもんくんの様子にSさんは迷います。このままうちの子にするのではなく、新しい家族を見つけてあげた方が良いのではないだろうかと。体は元気になり、何より愛嬌がある。
Sさんは決めました。「ドラえもんくんを譲渡会に出す」と。
雷に打たれたかのような出会い
2024年4月、満開の桜の季節にドラえもんくんは譲渡会デビュー。そうしたものの、ドラえもんくんは猫エイズキャリアで大きな猫、すぐ里親は見つからないとSさんは思っていました。他にも譲渡会には、可愛らしい健康な子猫がたくさん出ていますから。きっとみんな、その子たちばかり人気だろう。
それでもいつかは…と考えていたら、なんと声をかけてくれる50代のご夫婦が現れたではありませんか。
「一目ぼれなんです」
Sさんはビックリして、猫エイズキャリアであることと大怪我を負っていたことを話します。聞くところによると、ご夫婦の家の先住猫は猫エイズキャリアではありません。
決断を慎重にしてほしいとSさんは頼みますが、ご夫婦はドラえもんくんが良いと。ドラえもんくんを一目見た時から、まるで雷に打たれたかのような衝撃を受けたと言います。だから、ドラえもんくんじゃなきゃダメなんです。
「グルーミングも喧嘩もさせないので、うちの子にさせてください」
ご夫婦の覚悟にSさんは、ドラえもんくんをトライアルに出すことを決めました。
幸せでぶっちょ猫になったドラえもんくん
トライアルに出たドラえもんくんは、先住猫ともほど良い距離感で過ごすことができ、そのままご夫婦の家の子になることに。お家の子になると少しふっくらして、本物の「ドラえもん」のような見た目になっているんですって。
この知らせを聞いたTさんとSさんは、あの時決断をして本当に良かったとしみじみ思うのです。ドラえもんくんはそのまま住宅街の片隅に追いやられているよりも、まったく違う未来を迎えることができました。
胸がじんわり温かくなったTさんとSさんはまた、不幸な猫を減らすべく譲渡会を開催していくのです。新たな幸せな物語をつむぐために。
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愛すべき野良猫の会〜ゴンママ
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