30代のAさんは、現在育児休業中です。待望の赤ちゃんとの生活に幸せを感じる半面、頭をよぎるのはお金のことです。育児休業給付金は支給されているものの、以前の給与に比べれば手取りは減り、おむつ代やベビー用品などの出費がかさんで毎月の家計は赤字寸前です。
この状況を何とかしたいAさんは、「赤ちゃんが寝ている隙間時間に、得意の文章作成で稼げないかな……」と考え、在宅でできるWebライティングの副業に興味を持ちました。しかしネットで調べていると「働きすぎると給付金が止まる」「会社にバレたらマズい」といった情報が目に入り踏み出せずにいます。
育休中の副業は、法的にどのようなルールになっているのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。
雇用か業務委託かで扱いが変わる可能性も
ー育休中に副業をすること自体は、法律上問題ありませんか?
育休中の副業は、直ちに法律違反となるわけではありません。ただし、大前提として育児休業は「育児に専念するために仕事を休む期間」であることを忘れてはいけません。
ここで重要なのは、仕事の形態です。他の会社でアルバイトとして雇用される場合、たとえ短時間でも「その時間は育児をしていない」とみなされやすく、給付金の判定が厳しくなります。
一方、Aさんが検討しているWebライティングのような、成果物に対して報酬が支払われる業務委託であれば、時間の拘束がありません。赤ちゃんが寝ている間に少しずつ進めるといった働き方であれば、育児を放棄しているとは言い切れないため、比較的柔軟に判断される傾向にあります。
ー副業をしても給付金を満額もらうための、労働時間や日数の基準を教えてください。
育児休業給付金を受け取るためには、原則として「1支給単位期間(1カ月)」で、「就業日数が10日以下(10日を超える場合は、就業時間が80時間以下)」であり、「休業期間中に支払われる賃金が、休業前賃金の13%(※)以下」であることが必要です。(※給付率が67%の場合。50%の場合は30%以下)
雇用されている場合はこの日数・時間の制限が適用されます。一方、業務委託での副業の場合、ハローワークによって判断が分かれることもありますが、一般的には実労働時間を基準に考えます。
ただし、月に10万、20万と稼いでいるとなれば、「それだけ働けるなら、育休の必要がないのでは?」と判断され、受給資格を失うリスクもあります。
ー会社に副業禁止規定がある場合、育休中なら関係ないのでしょうか?
育休中であっても会社との雇用関係は続いています。会社側の視点に立つと、育休中の社員の穴を埋めるために他の社員が残業をしたり、代替の派遣社員を雇ったりと、大きなコストと負担を支払っています。
そんな中で「育休中だから」と隠れて副業をし、それがバレてしまったらどうでしょうか。会社や同僚は決して良い顔はしませんし、復職後の人間関係や評価に致命的なダメージを与えることになりかねません。
もし副業を検討するなら、まずは会社の就業規則を確認し、会社に「家計のために、育児の合間に無理のない範囲でやりたい」と相談して理解を得るのが、結果として自分自身を守ることにつながります。育休中も「綺麗に過ごす」ことが、円満なキャリア継続のポイントです。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ) 社会保険労務士/こころ社労士事務所代表
大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。