スーパーのパートとして働くAさん(40代女性)は、職場のママ友が勤務時間をしきりと調整していることが気になっていました。理由を聞いてみたところ、第3号被保険者の条件である年収130万円未満をキープするためだと分かりました。さらに、第3号被保険者であれば自分の社会保険料を払わなくても将来的に年金が受け取れることを教えてもらい、Aさんはショックを受けます。
Aさんは扶養の範囲を超えて働いており、夫婦で厚生年金を負担しています。そのためママ友のように「働き控え」をすることで、本人が保険料を個別に納めなくても将来、年金を受け取れる仕組みに不公平さを感じたのです。
実際にAさんが感じているように、第3号被保険者という制度は不公平といえるのでしょうか。社会保険労務士の小島朋子さんに話を聞きました。
一概に不公平とはいえない
ー第3号被保険者が不公平だと言われる理由は何でしょうか。
第3号被保険者の期間は、本人が保険料を納めていなくても「保険料納付済期間」として扱われます。そのため、結果として保険料の自己負担がないまま、将来、老齢基礎年金(国民年金)を受け取れる点が「不公平」と言われる主な理由です。
ただし、第3号被保険者期間のみの場合、将来受け取れる年金は老齢基礎年金が中心で、老齢厚生年金(厚生年金の上乗せ)はありません。受給額の面では差が出るため、一概に不公平とは言い切れないでしょう。
ーAさんのように第3号被保険者にならない場合のメリットはありますか。
Aさんのように会社の厚生年金に加入している(厚生年金被保険者)場合、65歳以降に受け取れる年金は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も上乗せされます。
また、万が一障害厚生年金を受け取ることになった場合も、国民年金(障害基礎年金)が原則1~2級であるのに対し、障害厚生年金では1~2級に加えて3級や、より軽い場合には障害手当金の対象となる可能性があります。
ー第3号被保険者は、どのような人が対象なのでしょうか。
年金制度では、会社員や公務員など厚生年金に加入している人を「第2号被保険者」と呼びます。第3号被保険者とは、この第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者のことをいいます。
対象となるには、原則として本人の年収が130万円未満であることに加え、同居の場合は第2号被保険者の年収の半分未満、別居の場合は仕送り額未満であることなどが要件となります。
ー第3号被保険者について、どのような見直しが検討されているのでしょうか。
現状でも、年収が130万円未満で第3号被保険者(社会保険上の扶養)に該当する収入水準であっても、勤務先の従業員数が51人以上で、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上などの要件を満たす場合は、扶養を外れて勤務先の厚生年金・健康保険に加入することになります。
2025年6月13日には「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」(年金制度改正法)が成立しました。
今後、短時間労働者に対する社会保険の企業規模要件が、2027年10月からは従業員数36人以上、2029年からは従業員数21人以上、2032年からは従業員数11人以上と段階的に引き下げられます。2035年10月からは企業規模要件が撤廃されるため、従業員10人以下の企業も、週20時間以上勤務する労働者が社会保険の加入対象となる予定です。
◆小島朋子(こじま・ともこ) 社会保険労務士/社会保険労務士事務所ホライズン代表
千葉県を拠点に活動する社会保険労務士です。障害年金の代理請求を中心に、法人向けには労務に関する各種ご相談、給与計算業務や給与ソフトの導入・設定確認を承っております。会社と人との良好な関係を築くためのサポートをいたします。