2026(令和8)年2月8日、第51回衆議院議員総選挙が行われました。
選挙で使用される投票用紙は少なく見積もっても、選挙権を持つ人と同数用意されます。では、全国で使われた大量の投票用紙は選挙後、どのように扱われるのでしょうか。2023(令和5)年より投票用紙のリサイクルを実践している、さいたま市の選挙管理委員会事務局と、全国の自治体と連携してリサイクルに取り組む特定非営利活動法人選挙管理システム研究会に聞きました。
投票用紙を資源として活用できないか、検討を重ねました
選挙後の投票用紙の保管や処分について、さいたま市選挙管理委員会事務局に聞きました。
――投票用紙は使用後どうなるのですか?
投票用紙は、公職選挙法の第71条に「投票は、有効無効を区別し、投票録及び開票録と併せて、市町村の選挙管理委員会において、当該選挙にかかる議員又は長の任期間、保存しなければならない」と定められています。
そのため投票用紙は選挙後、選挙管理委員会で議員の任期が終了するまで、厳重に保管します。その後、議員の任期が終了すると、処分が可能になります。処分方法は自治体によって異なりますが、ほとんどの自治体では現在も焼却処分されています。
さいたま市でも以前は焼却処分していましたが、選挙のたびに作成される投票用紙を資源として活用することができないか検討を重ねました。SDGsの取り組みの一環として、焼却する際に発生する二酸化炭素の排出量を減らすことも考慮した結果、現在は特定非営利活動法人選挙管理システム研究会に依頼し、リサイクルしています。
――手間やコスト面でのハードルは、ありませんでしたか?
選挙管理システム研究会と、さいたま市選挙管理委員会で連携し、円滑なリサイクル業務を行うことができているため、現状は大きな問題などはございません。
――どれくらいの分量をリサイクルしているのですか?
選挙によって異なりますが、約150万~250万票をリサイクルしています。
――廃棄の前に保管することになっていますが、どのように保管、管理されているのですか?
区役所によって保管場所は異なりますが、区役所の鍵のかかる文書保管庫などで施錠し、保管しています。
リサイクルの相談が急増、2023年までに130自治体から
続いて、全国の自治体と連携して使用済み投票用紙のリサイクルに取り組む、特定非営利活動法人選挙管理システム研究会に仕組みを聞きました。
――特定非営利活動法人選挙管理システム研究会とは、どのような組織なのですか?
中立の立場で、選挙管理委員会が実施する選挙の支援活動をするNPO法人です。設立は2003(平成15)年7月で、使用済みの投票用紙のリサイクルを開始し、現在では全国で100を超える自治体と連携しています。
――リサイクル事業は先進的な事例でしょうか?
リサイクル事業自体は、20年以上前から実施しています。つい最近始まった先進的な事例というよりも、20年前に開始した先進的な取り組みが、時代の変化により幅広く認知され、導入が検討されるようになったのが現段階といえます。
選挙で使われる投票用紙には、ポリプロピレンなどを主原料とする合成紙「ユポ紙」が使われています。プラスチック素材を含むため、焼却処分だけでなく、リサイクルして資源として活用することも可能です。
2022(令和4)年には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されたほか「国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律」の一部改正により、投票用紙の処分経費の計上が可能になりました。このような制度改正が、投票用紙リサイクル導入検討の流れを加速させていることもあり、全国の自治体からの問い合わせが急増し、2022(令和4)年から2023(令和5)年までに、見積もりを含む相談は130の自治体から寄せられました。
――リサイクル事業は、他のNPO法人でも実施しているのでしょうか
現時点において、投票用紙のリサイクルについて、選挙実務・法制度・機密性確保を踏まえた形で体系的に実施している団体は、当会以外には存在していません。
一般的なプラスチックリサイクル事業者は多数存在していますが、投票用紙は公職選挙法に基づく厳格な保管・管理が求められるため、「機密文書としての取り扱い」「未開封状態での搬送および管理体制」「選挙管理委員会との連携による適正な引き渡し」「分別・破砕・溶解まで一貫したセキュリティ確保」といった要件を満たす必要があり、一般的なリサイクル事業とは大きく異なる専門性が求められます。
当会は、ユポ製投票用紙の設計・運用に関わってきた背景を活かし、専門性を満たしたリサイクルの仕組みを構築・実施してきました。
――どのようにリサイクルするのですか?
投票用紙は議員の任期終了後、処分が可能になった際に選挙管理システム研究会がトラックなどで回収し、工場にて再資源化を行います。
回収された投票用紙は、粉砕した後、補強するためのプラスチックチップを混合し、溶解します。それをペレット化したものが、さまざまな製品の原料として使用されています。
また、リサイクルを実施した結果として、投票用紙を焼却処分した場合とリサイクルを比較すると、CO2排出量は約10分の1になります。削減されたCO2排出量の数値は、各自治体に投票用紙の枚数を元に算出し報告しています。2023(令和5)年度には、6874万4868票をリサイクルし、CO2の排出を219.7トン削減しました。
――ペレット化した原料は、何に使用されているのですか?
貨物用の樹脂パレットや農業、園芸用資材、建築用資材などの原料に使用されています。また、選挙啓発運動に使用する「うちわ」の骨組みに使用される場合もあります。