アパレル業界の販売員にとって、売り上げの『数字』は大切なものです。しかし数字ばかりに囚われてしまうと、接客の『本質』を見失うかもしれません。かつてアパレル業の店長を勤めた漫画家・ぼのこさんの作品『アパレる』より「135話:メモ」以降の一連のエピソードでは、数字ばかりに囚われた主人公の失敗が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約2.7万ものいいねを集めました。
主人公の春子は現在、アパレル店の本店と百貨店を兼任して販売員を勤めています。今週は春子の売り上げが悪かったことから、「もっと頑張らなくちゃ」「まだ頑張れる」と自分に言い聞かせていました。そんな春子のもとに、先輩のオダがやってきます。
疲れ気味な表情の春子でしたが、オダは「『若い時の苦労は買ってでもしろ』なんて言うし!だから頑張ってね!」とエールを送りました。
その後、お店に「コーディネートの相談をしたい」と話すマダムが来店します。
春子はマダムを見て「この方ならもっといけそう!少しでも単価の高い商品を売らなくちゃ!」と考えます。自分の叩き込んだ知識を饒舌に話す春子でしたが、そこにマダムは「あなたさっきからひとりでしゃべってない?それって『接客』なの?」と釘を差しました。
その言葉に春子は言葉を失い、周囲の雰囲気もピリつきます。しかしマダムは突如笑顔になり、春子が手にしていたブラウスとパンツを購入しました。初めて接客態度で客に叱られた春子は、迷いながらもマダムが去る前に深くわびます。
マダムは「次に来たときはぜひあなたの『心からの』おすすめを買いたいものね」と言い立ち去りました。春子は「私は大切なことを忘れていた」と大粒の涙をこぼしながら、店舗のリーダー・水仙に今回起きたことを伝えました。
春子は「私はお客様に『似合う服』じゃなく自分が『買ってほしい服』を勧めていた」「もっと頑張らなくちゃいけないのに」と訴えます。そんな春子に、水仙は「そんなこと誰も言ってないでしょ!」「もう十分あんたは頑張ってるよ」と優しく諭しました。
後日春子は、店長に「無理してまで兼任を続ける必要はないのよ」とシフトの変更を提案されます。しかしいつも自分を懇意にしてくれる客の手紙を読んだ春子は、「兼任は続けさせてください」と訴えました。
春子には今回の事件を経て、ようやく自分が本店でやりたいこと、そのために自分が学ぶべきことが見えてきたようです。
同作に対しSNS上では「マダムが格好いい!」「接客業以外でも陥りやすいから気をつけないと」などの声があがっています。そこで、作者のぼのこさんに話を聞きました。
短絡的な数字を気にしすぎると、中長期的な売り上げにはつながらないこともある
―同作で、描きたかったテーマや特に注目してほしい部分を教えてください
今回描きたかったのは、「売上」と「お客様目線」をどのように両立させるか、というテーマです。販売の現場では目の前の売上を求められる場面が多い一方で、強引な接客や声がけに違和感を覚え、悩むスタッフも少なくないと思います。短期的な数字を優先しすぎると、お客様との信頼関係を損ない、結果として中長期的な売上につながらないこともあります。本ストーリーでは、主人公・春子がその難しさに向き合い、葛藤を通じて学んでいく過程に注目していただけたらうれしいです。
―『売り上げの数字』ばかりに気を取られないために、アパレル業界でぼのこさんが心がけていたことはありますか
私自身も最初は春子と同じように、上司から数字ばかりを指摘されることに悩んでいました。
しかしよく考えてみると、評価する立場から見れば、お客様へのホスピタリティや接客の質は定量的に測りづらいものです。そうした背景を踏まえると、可視化しやすい数字を重視するのも、ある意味では仕方のないことだと気づきました。
そこからは次第に割り切れるようになり、その場の評価に振り回されず、自分なりの接客軸を持つことを心がけるようになりました。
―どんな人に同作を読んでほしいと考えますか?
同作は仕事の現場で避けて通れない人間関係の悩みや、立場や価値観の違いから生じるすれ違い、そしてそこから生まれる成長をテーマに描いています。
そのため、もちろんみなさんに読んでほしいですが、特に働く世代の方々に幅広く読んでもらえるとうれしいです。
<ぼのこさん関連情報>
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