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批判投稿のハートマークをタップ 数カ月後届いた内容証明は…高額賠償の請求通知だった! 「いいね」に潜む法的リスクが怖すぎる【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

ある日の夜、30代のAさんは自宅でくつろぎながらSNSを眺めていました。画面には、世間を騒がせている不倫騒動に対する激しい批判投稿が流れてきました。Aさんはその投稿の内容を深く読み込むことなく、「世間の意見はもっともだ」という軽い共感のつもりで、画面上のハートマークをタップしました。

それから数カ月、あの批判投稿すら忘れていた頃、Aさんの元に内容証明郵便が届きました。差出人は、SNSで批判されていた当事者の弁護士でした。封筒を開けると、投稿主だけでなくその投稿に「いいね」を押して拡散に加担したAさんに対しても、名誉感情を侵害したとして高額な損害賠償を請求するという通知でした。

SNSでの何気ない「いいね」には、どのような法的リスクが潜んでいるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

「いいね」は直ちに不法行為ではないが…

ー他人の誹謗中傷投稿への「いいね」は、不法行為(名誉毀損など)になりますか。

SNSの「いいね」ボタンを押す行為が、直ちに不法行為となるわけではありません。しかし、特定の文脈や態様によっては、「名誉感情の侵害」として慰謝料請求の対象となります。

実際に、ジャーナリストの伊藤詩織氏が杉田水脈衆議院議員を訴えた裁判では、杉田氏が伊藤氏を中傷する多数の投稿に対し執拗に「いいね」を繰り返したことが問題となりました。

この裁判において最高裁は、投稿内容が他人の名誉を著しく毀損するものであることに加え、ボタンを押す側に相手を侮辱するような加害の意思や特段の事情が認められ、それが社会通念上許容される限度を超えている場合には、不法行為が成立するという判断を示しています。

ー「リポスト(拡散)」の場合はどうなりますか。

リポスト(旧リツイート)の場合は、「いいね」よりも法的リスクが格段に高くなります。橋下徹元大阪府知事がジャーナリストを訴えた訴訟では、第三者の批判的な投稿を自身のコメントを添えずにリポストした行為が名誉毀損に当たるかが争われました。

大阪高裁は、リポストは投稿内容を自身のフォロワーに対して広める再発信行為にあたると指摘しました。たとえ自身の言葉でなくても、内容が真実であると確認せずに拡散した場合は、自ら発信したのと同様の責任を負うと判断し、賠償を命じています。

ー「ブックマーク代わりだった」「内容はよく読んでいなかった」という言い分は、裁判で通用しますか?

ブックマーク代わりだった、あるいは内容はよく読んでいなかったという言い分は、裁判で通用する可能性が極めて低いです。法的な判断においては投稿者の主観的な意図よりも、その行為が客観的にどう見えるかが重視されるため、一般的に「いいね」やリポストは投稿内容に対する賛成や肯定的な関心の表明と解釈されます。

むしろ、内容を確認せずに誹謗中傷を助長したという事実は、表現者としての注意義務を怠った過失とみなされ、不法行為の成立を後押しする要因にすらなり得ます。SNSでのリアクションは全世界に向けた意思表示であることを、改めて自覚する必要があります。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

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