京都の伝統行事の日程とスケジュール帳を組み合わせた「京都手帖」が、2026年版で20年目を迎えた。毎年、各書店の売り上げランキングに名を連ねる人気の秘密はなにか。版元の光村推古書院(京都市中京区)を訪ねた。
「こんなに大きな存在になるとは思いませんでした」。担当の大西律子編集長(55)はそう振り返る。最初に販売された07年版の制作にも関わった。
アイデアは、編集や営業の担当者による会議で生まれた。当初の提案は、京都の風物詩をまとめた本だったが、「それならスケジュール帳の方が良くないですか、という意見が出て。みんなすぐに賛成してスタートしました」。
1887(明治20)年創業の「本田雲錦堂」をルーツとする老舗出版社。美術書を中心に出版し、観光本はほとんど経験がなかった。さまざまな本で行事を調べ、各社寺に一つ一つ確認した。初版5千部で売り始めたが、即座に再版が決定。毎年の定番となった。
社寺から行事の情報が寄せられるようになり、内容がより充実した。最初は約220の社寺、約500の行事を掲載したが、現在は約350の社寺、約1300の行事に増えている。
年間の行事スケジュールのほか、名物店や土産物などの多彩なコラムを掲載する。社寺、文化施設のデータも網羅している。基本の構成は引き継ぎながら、少しずつ体裁をリニューアルしていることも特徴だ。
2010年版からは、木版画工房「竹笹堂」(下京区)に表紙などの挿絵を依頼、ぬくもりのある木版画が人気を集めている。同時に、京都の書店だけで扱われる京都限定版と、全国共通版の2種類の表紙で販売を始めた。「竹笹堂さんの絵柄がかわいすぎて、一つに絞れなかったからです」と大西編集長。発行部数は2種類とも同程度という。
読者の声を参考にしながら、使い勝手の良さを追求してきた。メモ書き用のページを増やしつつ、重くならないように薄い紙質に変更した。観光パンフレットなどが挟めるように、表紙にポケットを設けた。また、「京都手帖PRODUCE」と名付け、御朱印帳や一筆箋などの関連グッズも展開している。
シリーズ累計49万部のヒット商品に成長した。大西編集長は「京都を好きな人は、地元の方だけでなく大勢いる。京都だからこそ、このような手帖が出せると思う。これからも京都の面白さを大事に伝えていきたい」と語る。B6判、1870円。