Aさんの子どもは現在小学6年生。学校のテストでは90〜100点ばかり取る優等生です。最近、近所の大学付属中学校は偏差値50ほどらしいという話を聞いたAさんは、「このレベルなら、3カ月くらい受験勉強をすれば合格できるのでは?」と考え、中学受験を検討し始めました。
また、周囲の中学受験に挑戦している家庭の様子を聞いてみると、塾に月数万円を払って夜遅くまで通わせているそうです。この塾通いについて、Aさんは少し大げさに見え「うちはそこまでしなくてもいいかな。普通に勉強すれば受かるはず」と考えていました。
実際のところ、Aさんの子供はこのまま受験して私立中学校に合格できるのでしょうか。中学受験指導塾「應修会」塾長・茂山起龍さんに話を聞きました。
中学受験の勉強は、公立小学校の域を大きく超えている
ー学校のカラーテスト(教科書の内容の理解度を測るための確認テスト/先生の手作りではなく、文字通り専門の業者が作成した“カラー印刷”されたテストのこと)で90〜100点を取っている子なら、受験勉強なしで偏差値50の中学校に合格できますか
これについては、はっきり「難しい」と言えます。偏差値50付近の中学の入試問題は、公立小学校の授業で習う内容を大きく飛び越えており、たとえ学校で100点を取っていてもほとんど対応できないはずです。
そもそも、中学受験の入試問題は「見たことがなくても、習ったことがなくても、しっかり読んで考えれば出来る」という類のものではありません。
ー中学受験の入試は、学校の勉強とどんな点が違うのでしょうか?
まずは制限時間に対する問題数の多さが挙げられます。相当トレーニングを積まないと、時間内に解ききることすらできません。理科・社会は高校受験とほぼ変わらない範囲まで出ますし、扱われるテーマも大人でも首を捻るものが多いのです。算数も独特な問題が多く、小学校の授業では到底カバーしきれていないでしょう。そのため、学校の内容ができても「塾の勉強は別世界」と感じる子は珍しくありません。
このように、中学受験で問われる内容は、学校でやっていることとのリンクが薄いことも特徴的といえます。一般的な受験塾で扱われる教材は、成績上位層をターゲットとしたものであることが多く、当然入試もそれを基準に作られます。ただ、受験する学校によっても難易度は大きく異なるため、本来であれば子供の立ち位置を把握して本人に合った勉強をしていくべきです。
しかしながら、範囲の広さとカリキュラム進行スピードの速さから、それを実行するのはなかなか難しいところでもあります。
ー中学受験における偏差値50は、公立小学校の成績だったらこれくらい、のように比べることができますか
公立小学校と言っても地域によって中学受験率は違いますし、一概には言えません。ただ言えるのは、中学受験をしている子達の学力が絶対的に高いというわけではないことです。
彼らは、学校の授業よりも早い段階から高度な内容に取り組んでいたり、難しい問題に触れる経験を積んでいます。このことから、知識量や経験値が大きくなりやすいのは当然といえるでしょう。
こうした事情から、公立小学校の成績と中学受験の偏差値を直接重ねることは難しく、単純な換算はできません。
実際にレベルを知りたい場合は、学校のテストではなく模試を受けてみるのが一番確実です。中学受験生が受ける模試で偏差値50をマーク出来る子は、それなりに学力が高いと言えると思います。
◆茂山起龍(しげやま・きりゅう)中学受験指導塾「應修会」塾長
1986年生まれ。自らも大手ではない進学塾に通塾し、中学受験を経験。慶應義塾普通部に入学し、慶應義塾高校、慶應義塾大学へと進学。大学在学中から中学受験業界に足を踏み入れる。個別指導塾、家庭教師、大手進学塾で受験指導を行い、難関校から中堅校まで幅広く合格者を輩出。2011年2月、地元である西葛西に中学受験指導塾「應修会」を開校。SNS総フォロワー数2.1万人
▽中学受験指導塾「應修会」公式ホームページ→https://o-shukai.net/