4年前の秋、小さな黒猫の「みいたろう」くん(取材時・推定4歳半)は、公園でたったひとり、身を潜めるように暮らしていました。子どもたちに追いかけられ、逃げ場を求めて竹やぶへ消えた姿を、犬の散歩中に偶然見かけたのが、Xユーザー・くろねこ みいたろうさん(@kuro0302cat)でした。
亡き愛猫と重なった小さな黒猫ーー保護までの4カ月
みいたろうくんが逃げ込んだのは、竹が折れて突き出した危険な場所。無事を確かめずにはいられず、飼い主さんは翌日から毎日、公園へ足を運ぶようになりました。
「数日後、みいたろうをみつけました。幸いケガもなく、ホッとしました。実は、昔、この公園を縄張りにしていた黒猫を迎えて一緒に暮らしていたことがあるんです。すでに虹の橋を渡っていますが、その子によく似ていたので“ご縁なのかもしれない”と感じました」
しかし、公園に通っても会えるのは週1〜2回ほど。気温も下がる季節で、みいたろうくんの身を案じる日々が続きました。距離を縮めるため、飼い主さんは野良猫との接し方を調べ、声がけなどを少しずつ続けました。
「そのうち、公園に入る遊歩道の木陰で、私たちが来るのを待つようになったんです。犬と散歩していると、距離をおいて後ろをついてくるようにもなりました」
少しずつ信頼を寄せてくれるようになったのは、出会いから4カ月ほど経った頃でした。
「名前を呼ぶと出てきてくれるようになり、抱っこできる日もありました。何度か保護を試みましたが、うまくいかず落ち込むこともありました」
保護は難しいかもしれないーーそう思った翌日のこと。飼い主さんは、公園で思いがけない光景に出会います。
「忘れもしない2022年3月2日、公園へ行くと、みいたろうが足もとにまとわりつき、『ニャーニャー』と鳴いて離れなかったんです。『今なら保護できる』と思い、洗濯ネットとエコバッグを取り出して、ようやく保護できました」
エコバッグ越しに伝わる温もりと重み。その瞬間、胸はプレッシャーと決意でいっぱいになったといいます。
「命を預かったのだと思うと、押しつぶされそうでした」
こうして動物病院へ向かった日から、みいたろうくんの新しい猫生が始まりました。
家猫修行の日々ーー不安が絆へと変わるまで
保護当日の夜、みいたろうくんは慣れない環境に驚いたのか、夜鳴きをし、翌朝には水をひっくり返すほど混乱していたといいます。
「不安だったのでしょう。それでも私には懐いてくれました。4〜5日すると、のどを鳴らして甘えてくれるようになり、本当に嬉しかったです」
高齢犬の“柴ねえさん”とは、4週間の隔離期間を経て、つかず離れずの関係に。安心して暮らせるよう、飼い主さんは住まいの工夫も重ねました。
「障子を破れにくいものに替えたり、窓にマジックミラーフィルムを貼ったりしました。食欲旺盛で、ごはんが無くなると催促もあったので、1日5回に分けてあげていました」
家に来てすぐの頃は、物音や気配に怯えることも多く、外で過ごした時間の長さを感じさせました。しかし、時間が経つにつれ、少しずつ落ち着きを取り戻していったといいます。
「最初はトラックの音や雨風の音にとても怯えていましたが、少しずつ慣れていきました。柴ねえさんとも穏やかな関係で過ごせるようになり、ホッとしたのを覚えています」
やがて、家族として過ごした2年2カ月を経て、柴ねえさんは虹の橋を渡りました。
幸せな猫生を「この家で良かった」と思ってほしい
みいたろうくんは穏やかで慎重な性格。来客があるとテレビの裏に隠れる一方、お盆参りの際にはキャットタワーからお経を静かに聞く姿も見せ、家族を驚かせたこともあります。
「強く噛んだり引っ掻いたことは一度もありません。手からおやつをあげるときも気を遣っているのがわかるんです」
家具を壊すようなやんちゃさもなく、家族の様子をよく見て暮らしているみいたろうくん。保護から4年半、穏やかな日々を過ごす姿に、飼い主さんの思いは尽きません。
「『柴ねえさんが引き合わせてくれたのかも』『飼い主を選んで来てくれたんだね』と言ってくれる人もいます。あとからわかったのですが、みいたろうの腎臓は片方が機能していませんでした。外で生き延びることは難しかったでしょう。あのとき保護できて本当に良かったです」
だからこそ、これからの猫生を守りたい。そう強く願っています。
「『このお家の子になって良かった』と思ってもらえるよう、これからも寄り添っていきます。みいたろうには、『我が家に来てくれてありがとう。安心して過ごしてね』と伝えたいです」