ファンや関係者に惜しまれながら、生産を終了したGT-R。本記事では、その理由と次世代モデル"R36"の展望、また現在のGT-Rの中古車相場や競合車種について解説します。
GT-Rが2025年8月26日に生産終了
V6ツインターボエンジンを搭載し、最終モデルでは最高出力570PS、最大トルク637N・mを誇った日産GT-R。「スポーツカーの頂点」ともいわれた車が、2025年8月26日に最後の一台がラインオフし、生産終了となりました。
"R35型"と呼ばれたGT-Rは2007年発売。デビューから18年で幕を下ろしたことになります。
▽実は3度目の生産終了
「GT-R」の名を冠する車の生産終了は、今回で3度目です。
・1969年~1973年:スカイラインGT-R(通称ハコスカ、ケンメリ)
・1989年~2002年:スカイラインGT-R(R32~R34型)
・2007年~2025年:GT-R(R35型)
1969年に登場したスカイラインGT-Rは、日本で初めて本格的なレーシングエンジンを搭載した市販車でした。しかし、排ガス規制の厳格化に対応できず、1973年に生産を終了しました。
その後、同車はバブル期に復活を果たしましたが、こちらも排ガス規制への対応困難、また当時の日産の経営危機も影響して生産を終了しました。
GT-Rが生産終了に至った3つの理由
R35型のGT-Rが生産終了に至って理由は、主に以下の3つです。
・理由(1)法規への対応が困難になった
・理由(2)部品調達が困難になった
・理由(3)スポーツカーの需要が減少した
▽理由(1)法規への対応が困難になった
過去2回の生産終了でも原因になった、排ガス規制などへの対応。R35型のGT-Rは、2007年の復活から排ガス規制や騒音規制など数多くの壁を乗り越えてきました。
しかし、GT-Rらしい走行性能やフィーリングを維持して法規にも対応するには、膨大な開発コストがかかりました。結果として、同車の車両価格は2007年のデビュー時から18年で1.8倍以上(777万円→1444万円※)になりました。
※廉価グレードの価格
法規対応自体の難しさに加え、「コストが膨らんで消費者に提供できる価格でなくなる」ことも原因だったようです。
【衝突被害軽減ブレーキの義務化が影響?】
GT-Rのこのタイミングでの生産終了には、安全装備の法規対応が影響したと考えられます。
2025年12月から、継続生産車も含めた衝突被害安全ブレーキの装着が義務化されます。GT-Rがこれに対応するには、装着部品をさらに増やし、全体バランスを見直す必要がありました。それ故に、日産は2025年12月以前での生産終了を発表したと考えられます。
▽理由(2)部品調達が困難になった
GT-Rは2007年のデビューから18年間、一度もフルモデルチェンジせず、その伝統ある姿を守ってきました。こうした中で、日産は「部品調達が難しくなった」ことも生産終了の理由として挙げています。
もちろん、この18年の間に車の中身は大きく変わっており、走行性能も向上していました。しかしながら、基盤となるプラットフォームは変わっておらず、その点から変更できない部品もあったと考えられます。
▽理由(3)スポーツカーの需要が減少した
スカイラインGT-Rが流行った1970年代~1990年代は、世界的にスポーツカーの人気が高い状況でした。しかし、現在は車に対して実用性を求める声が多く、特に日本では「家族での使いやすさ」「燃費」といった点が重視されます。
GT-Rはスポーツカーとして非常に人気でしたが、全体的な需要や製造コストを考えると、やはり収益性が低かったと考えられます。
▽Q. 日産の経営難とは関係ない?
今回の生産終了に関して、日産は自社の経営難を理由に挙げていません。また、法規対応や部品調達の困難さといった点を考えても、経営難が大きな影響を与えたわけではなさそうです。
ただし、GT-R4度目の復活を果たすには、現在の経営状況から脱却する必要があるでしょう。