「荻窪は雷鳴とゲリラ豪雨で大騒ぎ。約5分でこれだけ写り込んだ」
近年、頻繁に発生している異常気象。日本でも猛暑や突然の大雨といった状況に見舞われることが増えています。
2025年9月、東京・杉並区荻窪にある私設天文台「東京荻窪天文台」のX(旧Twitter)アカウント(@halley_7898)にて、付近を襲ったゲリラ豪雨の様子を激写した写真が公開され、その様相にたくさんの驚きの声があがりました。
撮影時の状況について、同天文台の管理人であり株式会社アストロアーツ代表の大熊正美さんにお話をうかがいました。
皆既月食を撮影した同日、思わぬ落雷と豪雨に…
大熊さんの写真に写っているのは、2025年9月8日、午後5時50分頃から約5分間の空の状況。オリンパスのデジタル一眼カメラ「OM SYSTEM OM-1」に同メーカーの高倍率ズームレンズ「M. ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を装着、カメラを三脚に固定しライブコンポジットモードで撮影されたそうです。
突然の雷鳴に、自宅屋上に設置した同天文台に上がってきた大熊さん。
「お天気アプリでチェックしたところ、北側の埼玉県方面でたくさんの落雷があり、徐々に南下していることがわかりました」(大熊さん)
北の空を観察してみたところ、雷光を確認。そこで、カメラを三脚に設置して待機したところ、雷雲が北西方向から徐々に接近してきたといいます。大熊さんがその様子をカメラで撮影していたところ――。
「ものすごい雨の音が聴こえてきました。ふと見ると少し先の道路に、それこそバケツをひっくり返したような雨が降っていたので、『ああ、まずい』と急いでカメラと三脚を片付けました。その直後に自分のところにも豪雨がやってきました」(大熊さん)
その間、1分ほどだったといいます。カメラは無事だったものの、大熊さんは雨に降られてからわずか10秒ほどで、全身びしょ濡れに――。
そんな苦労もしながら撮影された写真。
空には暗雲が立ち込め、わずか5分の間にもかかわらず、数多の稲妻が確認できます。
実は、この日の未明から明け方には、日本では3年ぶりとなる皆既月食も観測され、大熊さんはその様子も撮影されていました。その日のうちに、落雷とゲリラ豪雨にも遭遇。大熊さんは2つもの「自然の脅威」に触れることになってしまいました。
大熊さんの撮影した写真が公開されたポストのリプ欄にも、多くの反響が。
「天変地異すぎますな…」
「自然の力って本当に予測不可能ですよね」
「この世の終わりみたい」
「なんか悪魔的…」
「美しい」
それぞれが、それぞれの表現で、自然の脅威に対する驚きの気持ちを表現しています。
――近年、突然の大雨や落雷が増えている印象がありますが、これまでにも同様の場面を撮影・観察されたことはありましたか?
大熊さん:子供の頃から自然現象に興味があり、天文や気象現象の観察や記録を行ってきましたので、数えきれないです。ただ、9年前に荻窪に引っ越してから、ゲリラ雷雨や落雷の場面を撮影する機会が増えたように思います。場所のせいというより、気象自体が熱帯化しているのだろうと思います。
――皆既月食にゲリラ雷雨、2つの自然の脅威に直面することになってしまいました。
大熊さん:これまで何度も皆既日食や皆既月食を観察してきましたが、これらは太陽、地球、月の位置によって起きるもので、まさに宇宙規模のとてもドラマチックな現象です。その不思議な美しさに魅了される人は多いでしょう。
一方で雷や豪雨は、地球大気の中で起きる局所的な現象です。ただ目の前で起きることだけに、私たちの生活には直接的に影響してきます。木が折れたり、火事になったり、停電が起きたり、洪水が起きたり…。そう言う意味では、恐怖を感じる現象と言っても良いでしょう。一昨年の夏にも、我が家のすぐ近くの公園の木に雷が落ちたのですが、激しい音と光には本当に恐怖を感じたものです。
◇ ◇
小学生の頃から無類の星好きだったという大熊正美さん。以前は原宿(渋谷区神宮前)にあった自宅の屋上に天体ドームを造り、約26年間そこで天体観察を行ってきました。9年前に荻窪に転居して以降は、そこに新規に設置した直径2.5メートルの屋上ドームにて、観察と撮影を継続しているといいます。
「望遠鏡をコンピュータでコントロールし、撮影された画像から都市の光を除去し、微かな天体からの光を強調することで、東京の明るい空の下でも美しい天体の姿を得ています」(大熊さん)
また、株式会社アストロアーツの代表として、天文雑誌「月刊星ナビ」の発行、「ステラナビゲータ」など天体観測用ソフトウェアの開発および販売、デジタルプラネタリウム「ステラドーム プロ」の開発や販売も手掛けています。
趣味、実益を兼ね、天体に関する活動を幅広く行っている大熊さん。東京荻窪天文台は私設天文台であり一般公開はしていないとのことですが、「多くの人に宇宙に興味を持っていただけるような活動をライフワークにしたい」という大熊さんの思いから、そこで撮られた美しい天体の写真は、Xを通じて発信されています。
■東京荻窪天文台のX(旧Twitter)はこちら
→https://x.com/halley_7898
■株式会社アストロアーツのホームページはこちら
→https://www.astroarts.co.jp/