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食べ物を喉に詰まらせ、プールで溺れ…子どもの危険、どうすれば!?焦りと緊張の連続の小児救命

山陽新聞社 山陽新聞社

 食べ物を喉に詰まらせたり、風呂やプールで溺れたりー。幼い子どもを取り巻く危険はさまざまだ。もし目の前で子どもに命の危険が迫ったら、どうすればいいか。第1子の娘は今、1歳7カ月。「いざという時の対処法を学びたい」と、岡山市内で開かれた小児救命講習に記者(31)が参加し、心肺蘇生の手順などを学んだ。

 子どもが倒れていて、息をしていない。すぐに胸骨圧迫を始める。AED(自動体外式除細動器)を持ってきてくれた人に「電源を入れて」と指示していると「(胸骨圧迫の)手が止まっています!」。厳しい指摘が飛んだ。

 7月末、岡山市北消防署であった小児救命講習の一幕だ。心肺蘇生で行う動作の一つ一つは難しくないが、実際にやってみると焦ってうまくできなかった。

 小児が心停止に陥る主な原因は窒息や溺水といった呼吸障害。何も処置をしない場合、蘇生率が1分ごとに7~10%下がるとされており、救急車が到着するまでの迅速な対応が重要だ。

 講習では救急救命士の稲富崇司さん(40)が講師を務め、親子連れ約30人が参加。記者も妻(31)、娘と一緒に胸骨圧迫と人工呼吸、AEDからなる心肺蘇生と、喉に詰まった食べ物などを取り除く方法を学んだ。

心肺蘇生の手順

 心肺蘇生で行う胸骨圧迫とAEDの操作は、子どもの模型を使って体験した。まずは周囲を見渡して安全確認し、肩をたたいて呼びかけ、周りにいる人に「あなたは119番を」「AEDを持ってきて」と指示を出す。

 胸骨圧迫は大人と子どもで方法が異なる。小児(1歳以上16歳未満)の場合は体格に応じ、両手ではなく片手だけで胸の真ん中を圧迫する。ひじを伸ばして押す▽胸の厚さの3分の1程度沈ませる▽1分間に100~120回のペース―といったポイントを意識しながら実践した。

 稲富さんがAEDを持ってきた人を演じ、「使い方が分からん」「どのボタンを押すの」と、矢継ぎ早に質問してくる。記者が指示を伝えようとすると、胸骨圧迫の手が無意識に止まる。「胸骨圧迫は絶え間なく行って」。何度も注意を受けた。

 AEDの機種によっては未就学児用の電極パッドやモードの切り替えスイッチが付いているので確認が必要となる。電極パッドを胸の右上と左下に貼り「傷病者から離れてください」と周囲に呼びかける。点滅している電気ショックのボタンを押した後、すぐに胸骨圧迫を再開する。

 体験では終始慌ててばかり。何だか情けなかった。それでも稲富さんは「厳しい指導は優しさです。よくできていました」とねぎらってくれた。

喉に物が詰まった時の対処法

 講習では喉に物が詰まった時の対処も学んだ。意識があれば「背部叩打法」を試す。手のひらの付け根で肩甲骨の中間を力強くたたく。座っていても立っていてもできる。叩打法がだめな時は「腹部突き上げ法(乳児は胸部突き上げ法)」を。背後から腕を回して握り拳をつくり、みぞおちとへその真ん中を素早く手前上方に突き上げる。

 乳児(1歳未満)の場合はうつぶせの状態で頭が下がるようにして片腕に乗せ、背中を強くたたいたり、あおむけにして指2本で胸の真ん中を強く圧迫したりする。

 4人の子どもを持つ自営業光岡明里さん(47)は「救命の知識を知らないと、いざという時に動けない。繰り返し講習に参加し、対応を体に染み込ませたい」と話した。

 講習は2児の母の自営業神野由紀さん(35)が「多くの子育て世代に救命を学んでほしい」と、消防署の協力を得て企画。来年以降も継続して開催する予定という。

 心肺蘇生は、子どもの模型相手の体験ですら緊張して思うようにできなかった。もしこれが「本番」だったらと考えるとぞっとするが、わが子はもちろん、身近な人の命も守れるよう定期的に復習したい。

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