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平日に親子3人お出かけ、有休をとった私に夫「どこかで時間潰してきていいよ」 私のチケットを押さえなかった夫を信じられない【カップルセラピストが解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

30代の女性Aさんは、3歳になる子どもがいます。ある日夫が「子どもが好きなキャラクターのイベントのチケットを買った」と言いました。続けて夫は「平日だし有給申請して休みを取っておいて」というので、Aさんは言われた通りに有給を申請します。しかしイベント当日になって、夫が「あなたの分のチケットは取っていない。イベントが終わるまでどこかで時間潰してきていいよ」と言い出しました。

子どもも家族みんなで出かけると思っていたので、「ママは一緒に見れないの?」と泣き出す始末です。また、夫が子どもと二人で出かけるのであれば、わざわざ有給を取らずに仕事に出勤したかったと思うAさん。夫はなぜこんな行動に出たのでしょうか。カップルセラピストの坂﨑崇正さんに話を聞きました。

「親子の時間を2人きりで作りたい」という考えの裏返しかも

―なぜAさんの夫はAさんのチケットを買わなかったのでしょうか?

一見すると、Aさんに対する「排除」や「嫌がらせ」に見えるこの行為。しかし、夫側の心理を想像してみると、必ずしも単純な敵意とは限りません。

たとえば、「親子の時間を2人きりで作りたい」という考えが背景にあったと考えられます。父親として、子どもと濃密な時間を過ごすことが“良い父親像”だと考え、普段多く関わってくれている母親には、せめて現場では休んでほしいという意図があった可能性もあります。ただし、この意図を「十分な説明もなく一方的に」行動に移したために、Aさんは「排除された」と感じたのではないでしょうか。いずれにしても、言葉が足りていなかったのは確かでしょう。

また、コスト意識やチケット手配の失敗も裏側にあったのかもしれません。あくまでも子どもが楽しむイベントだから、大人は付き添いに過ぎない。そう考えてチケット代を節約しようとしたのか、人気イベントで頑張っても2枚しか取れなかったという現実的な事情もありえます。

さらに、無意識のうちに「ママ=サポート要員」思考があったことも考えられます。日本の家庭で根強い「母親はいて当然」という思い込みが、夫の中にも無意識にあったのかもしれません。「有給を取って当然サポートしてくれるだろう」という前提で考え、母親の気持ちを置き去りにしてしまうことは、意外と多く見られます。また父親自身もサポート要員のつもりでいた可能性もあり、付き添うのか、その間待っているのか(自由にできるか)の「役割の違い」程度に考えていたのかもしれません。

―一緒に行けると思っていた子どもは泣いてしまいました。子どもをどうフォローすればいいでしょうか?

3歳の子どもにとって、「ママと一緒に行けない」という事実はとても大きなショックです。中には「ママが嫌だから来ないの?」と誤解してしまうこともあります。「ママは行きたかったけど行けなかった」と正直に伝えましょう。嘘でごまかすのではなく、「ママも一緒に行きたかったんだよ。でも今回はチケットがなかったの」と素直に説明しましょう。

同時に、「次は一緒に〇〇しようね」と、新たな約束を提案してみてください。また可能であれば「どっちと行きたい?」と選択肢を与えることで、子ども自身が納得しやすくなります。

子どもが泣いたり怒ったりするのは当然の反応です。「悲しかったね」「びっくりしちゃったよね」と共感の言葉をかけることで、子どもは安心します。

この件でAさんが1番感じたのは、「自分の気持ちが置き去りにされた」という感覚でしょう。夫に悪意がなかったとしても、「親子イベントを成功させること」だけに集中しすぎて、Aさんへの説明や配慮が欠けていた可能性があります。

このようなギャップを埋めるには、事実と自分の気持ちを切り分けて伝える対話が重要です。「チケットを買ってくれてありがとう。私も一緒に行けると思って有給を取ったから、置き去りにされたようで悲しかった」のように伝えると、責める印象を避けられます。

また、「なぜ3枚買わなかったのか」を冷静に聞いてみましょう。夫の意図を「知りたい」という姿勢で尋ねると、相手も防衛的にならず率直な対話がしやすくなります。さらに、「次は一緒に行けるように事前に相談したい」「チケットの手配は分担しよう」など、具体的なアイデアを共有すると建設的です。

大切なのは、お互いの「してほしかったこと」「してほしくなかったこと」を丁寧に言語化し合うことです。たとえ子ども中心のイベントでも、家族としての時間は「夫婦の連携」で成り立っています。この認識を持つことで、同じ出来事が“すれ違い”ではなく、“かけがえのない思い出”へと変わる可能性があるのです。

◆坂﨑崇正(さかざき たかまさ)臨床心理士・公認心理師
カップルセラピー専門機関「COBEYA」カップルセラピスト。スクールカウンセラーなど教育機関における相談支援や専門家への指導に従事したのち、現職。現在は主に、トラウマ体験や浮気・不倫などの悩みを抱えるカップルの支援に携わる。

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