おしゃれなお笑いがしたかったはずなのに
―― そもそもお二人はどうしてお笑いが好きになったのですか。
小田「私はテレビの影響が強いです。『巨泉・前武 ゲバゲバ90分!』と『カリキュラマシーン』が特に好きで。ショートコントがずっと続くのが楽しかった」
彼方「私は大阪出身なので新喜劇でした。『あっちこっち丁稚』『花の駐在さん』、あと、土曜日は午後1時からなんば花月の吉本新喜劇、2時から梅田花月の吉本新喜劇、3時からは松竹新喜劇の3本立てだったんです。土曜日が楽しみで、楽しみで。お昼ごはんを食べながら新喜劇を観るのが原体験でした」
―― お笑いの原体験が異なるお二人が、どうやって知り合ったのですか。
彼方「私は劇団員をしながら小田さんが働く大阪の会社にアルバイトで入ったんです。そこで知り合いました。小田さんは先輩で年上でしたが、友達みたいに打ち解けて、和気あいあいとやっていました」
小田「ボキャブラ天国のツアーとか一緒に観に行ったね」
彼方「東京のお笑いが好きになったのも小田さんの影響です。バナナマン、東京03、アンジャッシュなどのビデオを貸してくれて、『こんなおしゃれなコントがあるの!?』って驚いて」
小田「私たちもあんなスタイリッシュなお笑いを目指していたはずなんですが、気がついたら悪口漫才になっていて(苦笑)」
価値観が変わり、アマチュアの笑いも受け入れられるようになった
―― この20年で「お笑いの在り方」がずいぶん変化したと感じます。変ホ長調の背中を追うようにラランドやシンクロニシティがアマチュア時代にM-1の敗者復活戦まで行きました。R-1グランプリではアマチュアのどくさいスイッチ企画さんが決勝進出を果たしています。プロとアマチュアの境界線があいまいになり、多様化が進んでいる。当事者として、どう感じますか。
彼方「冗談で、『アマチュアの決勝進出は私らで最後にしてほしい』とは言うてます。伝説のままでいたいから(笑)。とはいえ、選択肢が増えましたよね。兼業芸人さん、ほんま増えました。ほかにも個人事務所を起ち上げたり、動画で活躍するという方法があったり。それはすごくよいことやと思う」
小田「会社員、一般人の視点で作られる漫才があってもいいと思います。生活の中で抑圧された気持ちを吐き出すような漫才は、逆にプロはできないですよ。仕事で理不尽な目に遭っても、割に合わないことがあっても、それをネタにできる。アマチュアだからこそ共感してもらえる笑いもあるんとちゃうかな」
彼方「M-1では『何それ?』みたいな対応だった会社も、時代を経て、THE Wになると応援してくれてね。社内報に『応援してあげてください』って載ったんです。時代が変化し、会社の理解が深まったからこそ続けられていますね」
小田「お笑いだけじゃなく、この20年でいろんな価値観が変わりました。結婚するか仕事を取るか、どっちか選ばなければならない時代を生きてきて、『いつ結婚するの』とずっと言われてきて、肩身が狭かった。このごろはそんなことを言う人いないでしょう。何事もこうでなければならないといった固定観念が薄れてきていると感じます」
―― 20周年を迎えた変ホ長調は今後どうなっていくのでしょう。
小田「ゆるい感じで、どちらかが死ぬまで、一生やり続けるんやろうな~と思います」
彼方「私が小田さんを看取るまで、骨を拾うまで続けますよ」
小田「なんで私が先に逝くことが前提なん!」
やり取りそのものが漫才になっている変ホ長調。20周年記念単独公演「変ホ長調のふたりごと」は8月31日(日)、BookCafe上方演芸(大阪市中央区)にて開催されます。
▽詳細はこちら
https://henhocho20.wixsite.com/stage
20年じっくり熟成させたアマチュア視点だからこその笑いをぜひご堪能ください。
取材協力:BookCafe上方演芸