「死ぬことより何をするか」末期がん公表のピアニスト、毎日1曲インスタに演奏投稿

京都新聞社 京都新聞社

 末期がんを公表し、一度は余命を宣告された京都府京田辺市の女性ピアニストが4月から毎日1曲、インスタグラムで演奏動画の投稿を始めた。入院中で病室から出られない人にも音楽を楽しんでもらいたいと企画。自身にとっても生きる力につながり、「もし体がぼろぼろになっても『またあした1曲だけ弾きたい』と思って毎日を楽しめる」と笑顔で話す。

 NPO法人「京田辺音楽家協会」理事長の竿下和美さん(50)=京都府京田辺市。「音楽であふれるまちづくり」をテーマにコンサート活動などを続けてきたが、2023年2月にステージ4の肺腺がんと診断され、約1年半の余命を告げられた。48歳だった。

 厳しい宣告にもかかわらず「がんかもしれないという覚悟はあったし、悲愴[ひそう]感はなかった」と振り返る。「死ぬことより、まずこれから自分が何をしなあかんかを考えた。嫌なことがあっても、それをどう生かすかが大事。日頃の活動にどう生かすか」で頭がいっぱいになったという。協会の仲間たちに事実を打ち明けた際は「私、この病気を武器にNPOを有名にするから」と決意を語った。

 現在は3週間に1度の抗がん剤治療を続けている。膝下にしびれはあるが、指は動く。今年3月に病院でコンサートを開いた時、看護師に「病室から出られない患者さんもいるの」と伝えられた。個人のスマートフォンなら動画を見たり音楽を聴くことができると、インスタグラムで動画投稿を始めた。Jポップを中心に「一発撮り」で収録し、リクエストも受け付けている。コメント欄に寄せられる「癒やされました」「軽やかな気持ちになりました」などの感想に力をもらっている。

 余命宣告を受け、「私の元気の源は音楽。音楽を通して少しでも幸せに、気持ちが楽になる人を増やしていきたい」という目標が明確になったという。「病気がなければ、本当にやりたいことを後回しにしていたかもしれない」。協会としての活動は年間100件を超え、自身もコンサートなど年末まで予定が詰まっている。これからも音楽の力を発信していく。

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