NHK大河ドラマ「べらぼう」に、松前道広(道廣)役として出演している、えなりかずき。
家臣の妻を木の幹に縛り付けて、その頭の周囲に据えた3枚の小皿を的に鉄砲を放ったり、粗相をした家臣に対して直接鉄砲を向けるなど、普段の人柄とはかけ離れた猟奇的な役柄を演じて話題になっている。
このえなりかずきは本名で、名字は漢字で書くと「江成」である。とくに難しい漢字を使うわけでもなく、名字としての違和感も感じない。また名字ランキングでも5000位以内という普通の名字なのだが、意外と「えなり」さんに会ったことがあるという人は少ない。
というのも、この名字は分布が極端に偏っているのだ。
「江成」は神奈川県の名字で、全国の7割ほどが神奈川県にある。神奈川県以外では、東京都や富山県に若干見られる程度で、その他の道府県にはほとんどいないといっていい。
従って、ほとんどの人が自分の周りに「江成」さんはおらず、直接会ったことがあるという人も少ない。
さらに、神奈川県の「江成」の約7割は相模原市に集中しており、あとは座間市や愛川町にある。つまり、神奈川県在住でも多くの人は「江成」さんと出会う機会は少ないといえる。
ちなみに、東京の「江成」も相模原市と隣接している八王子市と町田市に多く、相模原市付近以外ではかなり珍しい名字なのだ。
要するに、「江成」は数の上からは普通の名字なのだが、実際には神奈川県相模原市付近独特の名字であるといえる。ここまで集中していれば、「江成」のルーツは相模原市付近にあるのは間違いない。
相模原市中央区に江戸時代から続く旧家の江成家がある。
戦国時代は北条氏に属して田名郷の代官をつとめた江成筑後が祖で、江戸時代は代々相模国高座郡田名村(現在の相模原市中央区田名付近)の名主を世襲していた。
江戸時代後期の当主久兵衛は、決壊した烏山用水(相模原市中央区水郷田名)の堤防を私財を投じて改修、再開通させて流失した水田を回復するなど、郷土に尽くした偉人として知られる。
この地域に集中している「江成」は、この名家江成家となんらかの関係がある家が多いと考えられる。