イスラエル・イラン交戦激化 日本企業にとって課題はイスラエル企業との付き合い方

和田 大樹 和田 大樹

6月13日、イスラエルがイランへの攻撃に踏み切って以降、両国の間で軍事的応酬が続いている。イスラエル軍は15日から16日にかけ、首都テヘランや中部イスファハンにある核関連施設、ハマスやフーシ派などイスラエルと対立する国外の勢力を支援する精鋭部隊「コッズ部隊」の拠点など空爆し、これまでに200人以上が死亡、1800人以上が負傷している。一方、イランも報復としてイスラエルへの攻撃を強化し、これまでに発射された370以上のミサイルのうち30発ほどがイスラエル領内に着弾し、これまでに20人以上が死亡、600人あまりが負傷したという。国際社会は両国の自制を呼び掛けているが、イスラエル・ネタニヤフ政権が攻勢を緩める姿勢を示すことは現時点では考えにくい。

中東情勢の緊迫化について、イランやイスラエルへの渡航自粛、米軍が駐留するバーレーンやUAEへの影響拡大、ホルムズ海峡の封鎖など、日本企業の海外ビジネスに影響を与えることについて日々情報が発信されている。が、日本企業が把握しておくべきリスクはそれだけではなく、イスラエル企業との付き合い方が大きなポイントになる。

中東のシリコンバレー・イスラエル

イスラエルをめぐる国際的批判が一昨年10月を境に一気に膨れ上がっているが、中東のシリコンバレーとも言われるイスラエルのハイテク企業との関係を持つ日本企業は近年、大きなハードルに直面している。

 例えば、パレスチナを支持する市民団体は昨年7月、イスラエル製ドローンの輸入をめぐり、川崎重工業の神戸本社前で抗議活動を展開した。川崎重工業は防衛省の防衛力整備計画に基づき、イスラエル製ドローン1機の輸入代理店契約を締結しているというが、同団体はこれをパレスチナでの人道危機に加担する行為と位置付け、イスラエル製ドローンの購入は同国に経済的利益をもたらすと抗議の声をあげ、その契約解除を求める2万人以上の署名を同社に渡した。

 伊藤忠アビエーションは昨年2月、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズとの協力覚書を終了すると突然発表した。この覚書は2023年3月に締結され、防衛省の要請に基づき自衛隊向け防衛装備品の輸入を目的としたものだったが、2023年末に伊藤忠アビエーションの本社前でエルビット・システムズとの提携中止を求める抗議デモが発生した。イスラエルへの国際的批判の声が高まる中、国際司法裁判所が2024年1月イスラエルに対し、ガザ地区でのジェノサイド防止のための全ての手段を講じるよう命じるなど、時間の経過とともに、伊藤忠アビエーションにとってイスラエル企業との提携は難しいものになっていった。その結果、エルビット・システムズとの提携終了に繋がったと考えられる。

 イスラエル企業との提携を終了

繰り返しになるが、イスラエルのハイテク企業の存在感は目覚ましく、日本企業の間でもそういった企業との提携、協業などを進める動きが近年広がっている。無論、企業経営者が政治は政治、経済は経済と割り切る経営判断をするならそれまでだが、イスラエル企業との提携が大きな利益をもたらす可能性がある一方、それによって社会的な企業イメージが悪化するリスクも広がっている。

2023年10月以降、イスラエルへの批判はイスラム諸国を中心に広がり、イスラエル製品をボイコットする動きが顕著に見られたが、例えば、イスラエル企業と関係を持つ一方、インドネシアやマレーシア、中東諸国などに進出する日本企業A社があった場合、イスラエル企業との関係が現地におけるA社の評判を落とすシナリオが考えられる。イスラエル・イランの軍事的緊張は、海外でビジネスを展開する日本企業にとって決して対岸の火事ではない。

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