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「会議中に何度もウトウト…」もしかして副業で疲弊? 真面目な部下の居眠りに悩む上司…どう接するべきなのか【社労士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

Aさんは最近、部下の若手社員Bさんの様子が気がかりでなりません。Bさんは元来真面目で、仕事に対しても熱心に取り組むタイプです。しかしここ数カ月、そのBさんに異変が見られるようになっていたのです。

最初は、会議中に重要な議題について議論している最中、Bさんが一瞬ウトウトと船を漕いでいるのに気づきました。その時は「少し疲れているのかな」と軽く流したのですが、それ以降、同様の光景が頻繁に見られるようになったのです。

Aさんには思い当たる節がありました。Bさんは、会社の許可を得て副業をしていることを周囲に公言していました。Webデザインのスキルを活かし、夜間や休日に個人の仕事を受けているというのです。Aさんは「副業で相当無理をしているのではないか?」と推測していました。

AさんなりにBさんを気遣う言葉をかけ、それとなく注意も促してみました。しかし、Bさんは「大丈夫です。すみません、気をつけます」と力なく答えるだけで、具体的な状況を話そうとはしません。そしてAさんの注意もむなしく、居眠りやミスが改善される気配は一向に見られませんでした。

副業が原因と思われる部下の深刻な居眠りや業務遂行能力の低下に対し、Aさんはどのように接すればいいのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。

最悪の場合は懲戒処分になることも

ーBさんに副業の内容に踏み込んでヒアリングしても問題ないでしょうか

業務に支障が出ているという客観的な事実があるのであれば、その原因を探るためのヒアリングは問題ありません。ただし、進め方には配慮が必要です。

最初から「副業が原因だろう」と決めつけて問いただすのではなく、まずは「最近、会議中の居眠りや業務中の集中力低下が見られるが、何か理由があるのか?」という形で、本人の状況や体調について尋ねることから始めましょう。

プライベートな領域に過度に踏み込むことは避けるべきですが、会社には従業員の労務提供を適切に受ける権利があります。副業が原因で明らかに本業の業務遂行に支障が生じているのであれば、その事実に基づいて具体的な話し合いをすることは、上司としての責務とも言えるでしょう。

ー会社としての安全配慮義務や健康配慮義務はどうなりますか?

会社には、労働契約法、労働安全衛生法に基づき、従業員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)があります。これには、従業員の健康状態を良好に保つための配慮(健康配慮義務)も含まれます。

会社としては、まずBさんの健康状態を正確に把握することが重要です。状況によっては、産業医との面談を勧める、医師の診断を受けるよう促すといった対応が求められます。場合によっては業務を一時的に軽減したり、健康回復のための休養を指示したりする必要が出てくることもあるでしょう。

ー注意・指導しても改善が見られない場合はどうなりますか

度重なる注意・指導にもかかわらず、居眠りや業務ミスが改善されず、業務に支障が出続けている場合、配置転換や、程度によっては懲戒処分の対象にもなりかねません。

重要なのは、これらの措置は段階的に、かつ慎重に進める必要があるということです。丁寧にヒアリングと指導をおこない、それでも改善が見られない場合には、より踏み込んだ措置を検討するという流れが基本です。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士/こころ社労士事務所代表 大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。

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