深川麻衣、人生の岐路で信じるのは己の直感 映画『ぶぶ漬けどうどす』の先輩役者から学んだ心の余裕

磯部 正和 磯部 正和

 2016年に乃木坂46を卒業し、本格的に俳優業に舵を切ってからもうすぐで10年目という歳月が流れた深川麻衣。その間に出会った監督は、個性的かつ作家性の強い人たちばかりで、みな深川の女優としての表現力を高く評価していた。最新作『ぶぶ漬けどうどす』でも、俊英・冨永昌敬のもと、コミカルかつナイーブに、野心家でありつつ茶目っ気のある主人公を好演した。大きな決断こそ“直感”を信じるという深川が、これまでの人生を振り返った。

現場でどんどんと新しいものが生まれる冨永組

 映画『ぶぶ漬けどうどす』は、深川演じるフリーライターのまどかが、自身の作品のために夫の実家である京都の老舗扇子店に嫁いできたものの、本音と建て前を使い分ける京都の海千山千の女将たちに翻弄され、大騒動を引き起こしてしまう……という物語。

 

 「まず脚本のアサダアツシさんと冨永監督のタッグが魅力的だなと感じましたし、脚本も非常に面白くて“ぜひやりたいです”と思いました。特に私が演じるまどかは、最初は自分の仕事を成功させたい一心で京都に来るのですが、京都の人々に触れてだんだんと変わっていく。決していい事ばかりじゃないのですが、何とも言えない癖のある京都の人たちに惹かれていくんです。アサダさんがパンフレットに“これはまどかのラブストーリー”と書かれていたのですが、この映画を表すのにぴったりの例えで腑に落ちました」

 メガホンをとった冨永監督は、これまで『パビリオン山椒魚』(2006年)や『パンドラの匣』(2009年)、『乱暴と待機』(2010年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018年)、『白鍵と黒鍵の間に』(2023年)など、一筋縄ではいかない多面的な解釈のできる作品を世に送り出していた。

 「冨永監督の現場はとても豊かでした。台本を読んだだけでは想像もつかなかったような演出が飛んでくるんです(笑)。現場で何が飛び出すか分からないのが冨永組の魅力。私が台本とは違う言い回しをしてしまったことがあったのですが、監督は『そっちの方が良かったから、本番もそれでいきましょう』と。とにかくフレキシブルで、その瞬間で生まれたものでどんどんシーンが変化していく生き物のような現場でした」

 憧れる俳優は「みな視野が広い」もっとオンとオフを切り替えられるように

 深川演じるまどかが嫁ぐ先の義理の父母を演じるのが、ベテラン俳優の室井滋と松尾貴史だ。どちらも腹の底が見えない不気味さで、まどかと対峙する。

 「室井さんも松尾さんも大先輩なのですが、とてもチャーミングで素敵でした。お二人とも役者としての深みはもちろんなのですが、共に俳優業以外にも執筆活動や創作活動をされているんですよね。そういう様々な視点が役の豊かさに繋がっているのかなと感じました。視野が広く、どこか余裕がありそんな先輩たちに憧れます。私も仕事はもちろん、好きなことや趣味の時間を大切にしたいと改めて思いました。最近は休みの日に自然に触れたり、アクセサリーを作るなど、しっかりオンとオフを切り替えられるように心掛けています」

 アイドルから俳優業にシフトしてもうすぐ10年になる。前述したように錚々たる映画人が深川との作品を共にすることを望んでいる。

 「もう10年近くになるんですよね。これまで本当に素敵な監督や俳優の方々とご一緒させていただく機会に恵まれました。私自身も『この方とお仕事がしたい』と思えるような方と巡り合えたこの10年は本当に運が良かったです」

深川にとって大きなターニングポイントになった作品『日本ボロ宿紀行』

 まどかは人生を賭けて、夫の実家の老舗扇子店に飛び込む。深川にとって大きな決断は――。

 「やっぱり一番大きかったのは、乃木坂46を卒業して一人でやっていこうと決めたときです。誰に止められても『絶対に新しいことを始めたい』という気持ちがすごく強かったんです。周りの方の意見も大切にしていますが、人生のターニングポイントとなるような大きな決断ほど、自分自身で責任を持つためにも、自分の直感や気持ちを信じたいと思っています」

  自らの直感で進んだ俳優業。数々の縁に恵まれ、素敵な作品を世に送り出してきている。そのなかでも深川にとって忘れられない作品があるという。

 「どの作品も本当に素敵な方々との出会いがありましたが、深夜ドラマの『日本ボロ宿紀行』という作品は特に印象に残っています。高橋和也さんと日本全国を巡る話なのですが、本当に熱量の高い現場でした。スケジュールは非常にタイトだったのですが『良いものを作りたい』という一心でスタッフ、キャスト共に乗り越えた作品。『モノづくりって大変だけれど、やっぱり楽しい』と心から実感できたので、その後大変なことがあっても、あの時のことを思い出すと踏ん張れるんです。その意味ではとても大きな出会いの作品でした」

  今後のビジョンについて「あまり将来を逆算して『こうなりたい』と考えることをしないんです」と語った深川。そんな生き方に「ダメだな」と思うことも多いというが、やはりそのときに感じた“思い”を大切に“直感”で道を切り開いていきたいという。唯一「こうなりたい」という理想は“求められる俳優”。「深川麻衣にこんな役をやってほしい。こんな深川麻衣を見たい」――。そんな声をかけてもらえるような存在になるために、日々邁進する俳優道だという。

 映画『ぶぶ漬けどうどす』は6月6日より全国ロードショー 

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース