急きょ保護されたボロボロの元野良猫「人を恐れ、触らせない」 人馴れトレーニングを始めたら…保護して80日目に奇跡が!

渡辺 晴子 渡辺 晴子

今年1月、保護猫活動に取り組む「まねきねこ」さんが保護したキルトくん。当時キルトくん(雄・年齢不詳)の餌やりさんから「あまりにもボロボロな姿で様子がおかしい」とまねきねこさんのところに連絡が入り、大寒波が到来する時期だったこともあり、急きょ保護に乗り出すことになったといいます。

「餌やりさんから連絡を受けてすぐに保護をしようと思ったのですが、なかなかキルトは姿を現さず…体調が悪いのに保護ができなくてずっと胸が痛かったのを覚えています。やっと現れてくれた夜、緊急に捕獲しました。キルトは人をとにかく恐れ、人の愛を知らない、なでるどころか触れることもできない生粋の野良猫でした。過去に何があったのか分かりませんが、相当なことがあったんだと思われます。保護前も餌やりさんに懐くこともなく、もちろん触ったことがない状況でした」

猫エイズに口内に重度な潰瘍、口が痛くて全く食べられない…ステロイド治療に変更

保護時、キルトくんの健康状態は猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)に感染し、重度な潰瘍(かいよう)で歯茎が腫れていました。

「病院で歯を抜歯しようという話しもありましたが、とにかく潰瘍がひどく、口内の治療を先にする運びとなりました。口が痛くてものが全く食べられない。つまりは薬も飲ませることができない。そんな絶望的な状況だったんです。あの手この手で薬を飲んでもらおうと頑張っていましたが、キルトはとにかく口が痛くて、なかなかご飯が食べられませんでした」

治療を続けましたが保護してから17日経過し、なかなか体調が改善しなかったとのこと。やはり口内の潰瘍がひどいため、よだれがひどくなる一方で毛並みまで悪くなる状況に。そこで病院の先生と話し合いを重ねた結果、ステロイド治療に変更しました。

治療方針の変更後、潰瘍が良くなってきたのは保護して49日過ぎてから。キルトくんは毛づくろいをするようになり、少しずつステロイド治療の効果が表れてきたそうです。

「ステロイド治療のおかげで潰瘍がよくなり、だんだんリラックスする姿が見られるようになりました。ご飯を少しずつ食べ出してくれて。涙が出るほどうれしくて小さくガッツポーズをしたことを今でも覚えてます。私の前ではなかなか、毛づくろいをすることはなかったですがペットカメラを見るとリラックスしてる様子が見られて、毎日それを見ることがいつしか楽しみになりました」

治療で元気を取り戻した元野良猫 人馴れのため、なでるトレーニングを開始

こうしてキルトくんが少しずつ元気を取り戻してきたこともあり、次は人に馴れてもらうため、なでるトレーニングを始めることに。

「キルトの体調を考えるとやっぱり安心して薬をあげれるようになりたくて、触れるようにならないとって気持ちや、何よりできることならもう一度、キルトに人を信じてほしいという強い思いがあって…トレーニングすることを決意しました。やらないで後悔することは絶対嫌だったし、キルトをとにかく、優しくなでてあげたいと思うと諦めたくありませんでした。トレーニングのスタートは、孫の手の先にやわらかい歯ブラシを巻き付けて、それで触るというところから。何度もシャーと怒られて、叩かれたりかみつかれたりもして。正直、怖くなかったと言えば嘘になりますが、とても痛かった日もあります…でもキルトのこれまでの日々を考えたら、迷わず頑張ることができました」

まず毎日、
「キルト大丈夫だよ、大好きだよ」
「うちにきてくれてありがとうね」
「絶対に幸せになろうね」
などと優しく声をかけながら、怖くないよと言うことを分かってもらえるよう、まねきねこさんはキルトくんと向き合ってきました。

そしてトレーニングも歯ブラシから手に変える時は、鍋つかみのような手袋からスタート。怖くないと分かってもらえることを信じて、負担がかからないように、とにかく毎日少しの時間ですが触っていきました。やがてキルトくんをついに手のひらでなでられるようになったとか。まねきねこさんは、感激して声を出して泣きながら「キルトに何度もありがとうって伝えました」とのこと。

また保護して80日目にはキルトくんの汚れていた体を洗うこともできました。

「キルトは潰瘍でよだれが酷いこともあり、体のよごれがすごかったので、なんとか洗ってあげたいと何度も悩んでいました。ですがケージから出た時にパニックになり、動き回ってけがをしかけたり。猫エイズの影響で体調の変動が大きかったので、お風呂に入るリスクが大きすぎました。お風呂に入る体力がなかったのです。ゆっくり時間をかけることが必要でした。そして何より私は、キルトと信頼関係を築きたかったんです。

改めて病院の先生に相談したところ、やはりキルトは人をみるとパニックになり暴れてしまうため、きれいにするためには鎮静剤をうつしか方法はないとのことでした。でもその日はふと思ったんです。トレーニングの日々を鮮明に思い出して。キルトは手でなでさせてくれるようになったので、私が洗ってあげようと思いました」

キルトくんを洗濯網に入れながら、まねきねこさんが体を洗うことに。キルトくんは全く暴れることなく気持ちよさそうに洗わせてくれたといいます。

「想像の何百倍もキルトがえらくて私に身をゆだねてくれました。洗いながら何度も涙が出そうになって。キルトにありがとう、ありがとうねって話しかけながら汚れを無事にとることができました。きれいになったキルトはかわいくて幼くて、今まで必死で強く見せてたんだなと思うとまた愛おしさと大切さが増しました」

少しずつまねきねこさんとの距離を縮め、心を許すようになってきたというキルトくん。今のところ里親募集は考えていないそうです。

「保護猫活動をしている立場でいうと、もしかしたらキルトの状態を理解し、大切に育ててくれる方にならお渡しするべきなのかもしれません。ですが私自身、今もまだキルトには認められたと思っていません。あの日、私はキルトにもう一度、人を信じて欲しいとお願いしました。もしもキルトが心を開き始めてくれているとするなら、これは最後の約束です。どんなことがあっても、キルトが幸せと思ってくれるように、私が頑張っていきたいと思っています」

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