特別養子縁組…20年前は迎える子どもを「写真と面会で選んだ」? 先輩義親から学んだ制度との違いと変わらぬ覚悟【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

みなさんは「特別養子縁組制度」をご存知でしょうか。 特別養子縁組とは子供の福祉の増進を図るために、養子となる子供の実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度のこと。特別養子縁組で子供を迎え入れたあきママさんによるコミックエッセイ『20年前に養子を迎えたツバメさんの話』は、実体験をベースに、過去と今の特別養子縁組制度の違いについて描かれた一作です。以前X(旧Twitter)にポストされると、約3000ほどの「いいね」が寄せられています。

特別養子縁組制度を経て「そらまめ」くんという息子を迎え入れたあきママさんは、20年以上も前に特別養子縁組を利用した「ツバメ」さんと話す機会がありました。ツバメさんは娘「ヒナ」ちゃんを成人まで育て上げた実績があるなかで、同じ特別養子縁組制度でも、あきママさんの時と比べた場合、時代が違うために勝手が大きく違ったようです。

例えばあきママさんが息子を迎え入れた時は、手続きを済ませて待機家庭になったのちに、斡旋団体から「1週間後に子供を連れていきます」と知らされるのみで、男の子か女の子かも分からない状態で待っていました。そして、1週間後に子供を迎え入れて現在に至ります。

一方でツバメさんの場合は、児童相談所からFAXで候補となる3人の子供について書かれた書類が送られ、子供の写真に性別や性格などの情報が書いてあるのみでした。しかし、ツバメさんは少ない情報だけでは決められず、実際にそれぞれの子供と面会した結果、ヒナちゃんを選んだのです。

そういった経緯があるため、あきママさんの「子供は選べない」というルールを知ったツバメさんは、驚きながらも「初めて会った時になんか違うなって思う事ないの?」と質問。あきママさんとしては何の違和感もなく「この子はうちに来るべくして来た」と思っていたので、気にしたことはなかったそうです。

そもそもツバメさんの時代は、子供が2歳にならないと特別養子縁組の手続きができませんでした。2歳といえば、ある程度の物心がついているため、何度も面会や外出、お泊りを重ねて時間をかけながら相性を確認する必要がありました。そういった段階を踏まずに、いきなり子供と生活を共にするパターンであれば、「ツバメさんが不安に感じるの分からなくもない」とあきママさんは思うのでした。

2人はお互いに話したことによって、子供を選べること、選べないことのメリット、デメリットを感じつつ、結局「この子を幸せにするんだ」という義親の覚悟が大切という答えに行きつきます。

ちなみにヒナちゃんは3歳まで孤児院で過ごしたものの、ほとんど孤児院での記憶がありませんでした。しかし、大きくなってから孤児院のクリスマス会に参加した際、ヒナちゃんが赤ちゃんだった時の担当の先生が「あなたヒナちゃんだって…?」と声をかけられたそうです。

孤児院の先生は子供を送り出す時は、異変を感じて不安にさせないために、あっさりと見送るようにしているとのこと。しかし、先生いわく、担当している子は自分の子供のようにお世話しても旅立ってしまうので、「生まれてきてくれてありがとう」「大好きだよ」とたくさん伝えて幸せになれるように、ただ願うのだそうです。そして、大きくなったヒナちゃんと会った先生は、感動のあまり大号泣するのでした。その後、ヒナちゃんは孤児院で働きたくなり、今は社会福祉の勉強をしているそうです。

ヒナちゃんを20歳までに育て上げ、「まぁ もう成人したし 私が出来ることも終わったかな」と振り返るツバメさん。それでも幼いそらまめくんを前にして「もう1人くらい育てないなー」と言葉をもらすのでした――。感動の声も寄せられたエピソードを手がけたあきママさんに、同作について話を聞きました。

―同作を描いたきっかけを教えてください。

私は特別養子縁組で3歳の息子を育てています。最近では同じように特別養子縁組をしている家族と話す機会が増え、ある集まりで、漫画に登場するツバメさんという方とお話しする機会があったのですが、私たちの委託時の体験と全然違っていて面白かったので、今書いているInstagramでの漫画のネタにさせてもらいました。

この漫画は実はツバメさんだけでなく、他の家族の体験も組み合わせて描いています。フィクションも少し混ぜつつ、特別養子縁組のことをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いで描きました。この作品を通じて、多くの方に養子縁組の魅力や多様な側面を知っていただけたら嬉しいです。

―作中で特に気に入っている場面があれば、理由と一緒に教えてください。

漫画の中で特に気に入っているのは、乳児院の職員さんがひなちゃんとお別れするシーンです。以前、乳児院の職員さんからInstagramでメッセージをもらったことがあるんですが、その方は、乳児院に来る赤ちゃんたちを自分の子供のように大切にお世話していると教えてくれました。赤ちゃんたちが良い里親さんのもとに行くのは嬉しいけれど、やっぱり寂しさもあるそうです。自分では育てられない切なさと、良い家族に送り出せる喜びが混ざった気持ちを抱えていると聞きました。

このメッセージが心に残っており、その感情を漫画で表現したいと思いました。読者の方から、その気持ちが伝わったとたくさんメッセージをいただけたので、とても嬉しかったです。

―特別養子縁組を考えている人に、何かアドバイスを送るとすれば、どのような言葉を投げかけるでしょうか?

特別養子縁組は、人の人生を背負うとても大きな決断なので、私も気軽に「特別養子縁組しようよ!」とは言わないようにしてるのですが、でも私にとっては特別養子縁組は大好きな息子と出会わせてくれて、毎日がとても幸せで、本当に素敵な制度だと思っています。

実は特別養子縁組って年齢制限があるので、不妊治療を終えてから考え始めたけど、年齢の制限で進めなかったって方もけっこういらっしゃるんですよね。それは本当にもったいないことです。もし、特別養子縁組に少しでも興味があるのであれば、ぜひ早めに調べてみてください。

―読者にメッセージをお願いいたします。

私の漫画を読んでくれた皆様ありがとうこざいます。私は少しでも、養子のことや里親のことをたくさんの人に知って欲しいと思って、Instagramをメインに漫画で発信をしているので、よかったら他の作品も見に来てくださいね。

<あきママさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/aki_engumi
▽Instagram
https://www.instagram.com/aki.engumi/
▽blog あきママの特別養子縁組絵日記
https://akiengumi.nbblog.jp/

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