大きな木製の枠に弦が張られたハープ。音色も演奏スタイルも優雅なイメージですが、ハープ奏者の「中村愛𓏢 Megumi Nakamura」(@megumi_nakamura)さんが過酷な事実をXに投稿しました。
「多分ハープ奏者あるあるなんですけど、指紋が日々変わってしまうため、指紋認証がめちゃくちゃ苦手です。登録しても3日とかで開かなくなります。という話を人にすると、『めっちゃ犯罪できるじゃん』と言われます。しない。」
ハープは指先を使う楽器ですが、日々指紋が変わってしまうほどとは! ハープを演奏すると、指紋が元に戻らないくらい指先の皮がどんどんめくれてしまうということなのでしょうか。なんだか痛そうです…。中村さんに詳しいお話を聞きました。
――演奏すると、指の皮がむけてしまうのですか?
数ヶ月単位で楽器を弾かなければ、指紋も元通りにはなるのかもしれません。演奏している時は、少しずつ指の皮が削れていくのに加え、あまり指の皮が厚いと音が固くなってしまうので、ハープ奏者は定期的に爪やすりで指の皮を削っています。
――ということは、ハープを始めた頃って、指先がすごく痛いのでしょうか…。
そうなのです!綺麗で優雅なイメージのある楽器ですが、最初は血豆ができるなど、痛みとの戦いがある楽器なのです。以前合宿に参加した時、私があてがわれたハープを弾こうと楽器の前に行ったら、血まみれだったこともあります。
――血まみれのハープ…過酷ですね。指先が痛くても続けられる魅力とは?
とにかく音の美しさです! 倍音(※)が豊富な楽器なので、一音弾くと同時にふわっといろんな音が鳴ってくるのがとても好きです。また他の楽器と違って弓や鍵盤を使わず、指で直接音を出すので、指も楽器の一部なのですが、そのせいで人によって音色が変わるのも魅力です。
※倍音:複数の周波数の音が同時に振動すること
――ハープについてあまり知らないという方も多いと思います。まず、ペダルが7個もあることに驚きました。
ハープのペダルはピアノで言うところの黒鍵にあたります。ですので、曲を演奏している時に♯(シャープ)や♭(フラット)が出てきたら足でその半音操作をします。どの奏者も口を揃えて「ペダルがなければいいのに」と言うぐらい、これが難しいです…。
――ピアノのペダルみたいな大きなサイズで踏むのも大変そうです。以前に、ハープは自分では分解できないという投稿もされていました。どうやって運ぶのですか?
ハープ用の台車なるものが存在しているので、地上を移動する時はその台車を使用します。移動手段としては、本当は新幹線とかにも載せたいのですが、あまりに大変すぎるので、ワンボックス車に寝かせて乗せています。
――移動も大変なのですね。お母様がハープをしている人が少ないからハープを勧められたとか。実際に、ハープ演奏者は少ないのですか?
たとえば全国の音楽大学でピアノ科を出る方は毎年数百人規模でいますが、ハープは数人しかいません。母の見立て通り受験は倍率が確かに低いのですが、ハープの仕事を取るとなると…これが受験倍率など比べ物にならないほど、めちゃくちゃ難関です。コンサート情報誌を見ても、ピアノやヴァイオリンのコンサートはしょっちゅうありますが、ハープは滅多にありません。よって、母にはそこまで見越して欲しかったなと思っています。
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そんな中村さんの貴重なハープ演奏が聴けるコンサートが、5月18日14時からサントリーホール大ホール(東京都港区)で開催されます。
「コンサート『巨匠ヨハン・デ・メイ』内で、世界的作曲家・指揮者であるマエストロ・デ・メイ編曲によるC.ドビュッシー『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』のハープとオーケストラのための協奏曲を、ご本人指揮のもと東京フィルハーモニー交響楽団さまと演奏いたします。ハープの音色を是非聴きにいらしていただければ幸いです!」(中村さん)
◾️中村愛さんのX https://x.com/megumi_nakamura