一般にほとんど公開されることがない、自衛官の生活スペースである「居室」。それをペーパークラフトで再現した画像が、Ⅹ(旧Twitter)で表示数3万を超えている。
制作者の「鉄道職員元陸自(大洗のやす子・非公認)」さん(以下、大洗のやす子さん)に聞いた。
90年代後半頃の居室を再現
大洗のやす子さんは陸上自衛隊の施設科部隊に勤務していた元3等陸曹で、現在は関東地方の鉄道会社に勤めている。
自衛官時代に生活していた居室をイメージしたペーパークラフトの画像をⅩに投稿したところ表示数が3万を超えたほか、ベッドだけを再現したペーパークラフトにいたっては表示数5万に達した。自衛隊勤務を経験したユーザーからは「懐かしさ満載!!」「俺たちも、こんなやつだった」など、当時を懐かしむコメントが寄せられている。
陸上自衛官のうち独身の陸曹(下士官)と陸士(兵)は営内居住、すなわち駐屯地内に居住することが原則。自衛隊用語は一般の人に分かりづらいためよく「寮」と表現されるが、実際には隊舎内の居室や「生活隊舎」と呼ばれる居住スペースで生活している。
大洗のやす子さんが制作した居室は、鉄枠だけで何の洒落っ気もないベッド、1人5枚が割り当てられる緑色の毛布、畳まれた毛布の上に整頓されたシーツと枕、ロッカーや私物入れなど、ディティールがたいへんリアルだ。
陸上自衛隊の居室は、ベッド、ロッカー、私物入れなどの備品は共通しているものの、時代や駐屯地によって微妙な違いがあって、しかも収容人数や部屋の広さなど必ずしも一律ではない。大洗のやす子さんは、自身が勤務した部隊の一般的な居室をイメージしたそうだ。
ちなみに陸上自衛隊に限らず陸海空自衛隊の処遇改善の一環として、居住環境の改善も少しずつだが進んでいる。ベッドは幅の広いものになり、毛布の材質はより柔らかいものに更新されている。
それにしても、よくできている。どこかで腕を磨いたのだろうか。
「幼少の頃から紙を使った工作が好きで、ペーパークラフトを本格的に始めたのは20代の頃です」
当時すでに自衛官として勤務していた大洗のやす子さん。駐屯地記念祭のお土産用に、73式大型トラックのクラフトを制作したところこれが好評で、いろいろつくっているうちにハマってしまったという。
居室をつくったきっかけは「姪っ子がシルバニアファミリーで遊んでいるのを見て、駐屯地の居室があったら面白いな。紙でつくれるんじゃね? と思った」とのこと。制作はずいぶん前にしていたそうだが、なんとなくXに投稿してみたら予想外にバズったそうだ。
Xには居室やベッドのほか、アンビュランス(アンビ)と呼ばれる1トン半救急車、74式戦車、航空自衛隊のF2戦闘機、第2次大戦時の米軍戦略爆撃機B29などのミリタリー系や鉄道車両のペーパークラフトも投稿されている。
制作を頼まれることもあるのでは?
「依頼は時々あります。技術的に制作できない物もありますが、可能なものは引き受けています」
最近だと鉄道車両の依頼が多いそうで、変わったものだと64式7.62mm小銃の弾倉を頼まれたという。
今後つくりたいものは「64式7.62mm小銃の内部まで再現し、分解結合が可能なモデル」という答えが返ってきた。これは腕の振るいどころが満載のモデルになりそうだ。実現を楽しみにしたい。
Xにはペーパークラフトの展開図も一緒に投稿されているから、プリントアウトして自分で制作することもできる。
鉄道職員元陸自(大洗のやす子・非公認)さんのX