就職情報サイトを運営する各社の調査によると、2025卒の就職活動は早期から高い内定率で推移しています。企業側も例年より多くの採用枠を埋めるため、「説明会開催日数や選考期間の延長」「初めての早期選考や冬季インターンシップの実施」といった工夫を重ねています。中には、大学1年生から参加可能な選考会を開く企業も現れています。
また、優秀な人材を確保するために「配属部署や勤務地の確約」「初任給の大幅な引き上げ」といった施策も行われており、新卒採用市場はまさに「売り手市場」の様相です。
しかし一方で、こうした「学生有利の売り手市場」の状況をうまく活用できず、就職活動に迷いを感じる学生も少なくありません。Aさん(関西在住、20代、学生)も、「採用増に対応するための長期の採用活動」をうまく活用できなかった学生の一人です。
「ともだちのともだち」「SNSの就活垢」の話に焦る
Aさんは関西の中堅私立大学4年生。全国区ではいわゆる「関関同立」より知名度は劣るものの、地元の就活に強いと言われる大学に在籍しています。
「就活を意識し始めたのは、大学2年生の時です。サークルの1つ上の先輩がインターンシップにめちゃくちゃ申し込んで、夏休みのサークルイベントもよく欠席していたんで、私ももうすぐ就活が始まるのか~って思って。とりあえずXで『就活垢』を作って同じ学年の人をフォローして情報収集をはじめました。そうしたら、2年生でもインターンシップや早期選考に応募している人がいると知って、驚いたんです」とAさん。
就活垢では、就職する年度(例えば2025年春入社の場合「2025卒」)をアカウント名に付けておくと、入社年度の同期と交流しやすくなります。就活生アカウントのほかにも、採用担当者や大学キャリアセンターなど、就職に関する多数のアカウントが情報発信をしていて、それらを眺めているだけでも時間があっという間に過ぎていきます。
自分も早くから活動しているのにうまくいかない…にありがち勘違い
Aさんも大学3年生の前期からインターンシップに申込むためのエントリーシートを書き始めました。周りの学生のなかには、なんと3年生の夏休みに内定を得る学生も出現。そんな様子に、Aさんは少しずつ焦るようになりました。
「長期のインターンはバイトと両立するのが難しいなと思って、1Day開催やオンライン開催のオープンカンパニーにたくさん参加しました。エントリーシートを提出しなきゃいけない会社も結構通って、早期選考の案内ももらいました」
順調に就活が進み始めたように思えたAさんでしたが、実際の面接に進んでから悩み始めることに。エントリーシートや一次面接は通過するけれど、二次面接以降で不合格になることが続き、行き詰まりを感じるように。結局、Aさんは4年生になる直前の2月ごろに心が折れて一度就活を中止してしまいます。
再び活動を再開したのは、4年生の6月ごろ。大学のキャリアセンターから進路調査の電話が来たことがきっかけで、大学に来た追加募集の求人票に応募。キャリアセンターでの面接練習の甲斐もあって、夏休みには無事に内定を得ることができました。
Aさんは自身の就活を振り返ってこのように語ってくれました。
「私の周りでも、就活スタートは早いのにうまく活用できなかった学生は結構います。これはキャリアセンターの相談員さんと話していて指摘されたんですけど、そういう学生の共通点があって、私もあてはまります」
・就活を優先して、学生本来の活動である部活やゼミ、授業を後回しにしてしまっていた
・エントリーシートが通過することに安心し、自己PRや志望動機を見直していなかった
売り手市場だからこそ、就活が長期化することで学生が迷い込む「落とし穴」も存在します。その弊害を解消するための社会的な取り組みや学生支援が必要なのかもしれません。