関西弁「ほんま」→漢字で「本間」は嫌われてる?「本間って書く人ムリ」「本間はやめて」…専門家の見解は

金井 かおる 金井 かおる

 「ほんまに?」「ホンマか!」。本当やまことを意味する関西弁の「ほんま」。文字にするとひらがなやカタカナが主流ですが、ネット上ではいつの頃からか「本間」という漢字表記を見かけるようになりました。「本間にかわいい」「本間に好き」など。これに対し、一部からは「ホンマを本間って書く人ムリ」「本間と書くのやめてほしい」「見るたびモヤモヤする」「ないわぁ」と嫌われているようでーー。

専門家「本間は江戸時代からあります」

 2008年4月に日本版の運用がスタートしたツイッター(現X)では、2017年にはすでに「ほんまは本間ではなく本真」「漢字で書くなら本真が正解では」といった意見が見受けられ、最近でも「本間じゃなくて本真と書いて」「本間だと名字でしょ」「本間やったら畳の大きさ」などとつっこまれることも。一方で、「本真を使ってるのを見たことがない」「本真が正解らしいけど、これはこれでしっくりこないのも事実」という声もあります。

 国語辞典編さん者の飯間浩明さんに話を聞くと、笑って答えてくれました。「私の結論は簡単でして、『どっちでもえんやん。そこは怒るとこちゃうやん』ということです」。嫌う人の気持ちも分かるとしつつ、「本間は江戸時代からあります。昔からある伝統的な表記です。変換ミスで間違えているんではないです」。

 飯間さんの説明によると、1702(元禄15)年に京都で出版された浮世草子「元禄太平記」には「本間の心中をたて」という表記があります。近代の文豪夏目漱石は、1905(明治38)年に発表した短編小説「幻影の盾」の中で「うそぢや無い、本間の話ぢや」という表記を使用しています。ほかにも高浜虚子など、明治から昭和の作家も本間を使い、必ずしも本真の表記が多いとは言えないとのこと。

 「本真と書くのは、あくまで語源を念頭に置いたものであって、それが現代の正解でもなんでもない。日本語には当て字が多く、語源と関係のない表記は山ほどあります。当て字を否定するといろいろな漢字が表記できなくなります。例えば、めちゃくちゃは目茶苦茶や滅茶苦茶と書いたりしますが、意味が通じないと言ってもしょうがない。当て字を禁止したら日本語の文章が書けなくなります」(飯間さん)

 飯間さんはネットでの議論の特徴について、「ある日突然、それは間違い、こっちが正しいというルールが現れ、拡散される。今までどっちでもよかったことが批判されるのは息苦しい」とし、「本真か本間かという表記も、以前は問題にならなかった。もともと関西のしゃべり言葉であったものを、漢字表記でどう書くかと問うことに無理があるんです」。

 表記は複数あっていいと、飯間さんは強調します。

 「方言の表記は、文部科学省でも文化庁でも国語辞典でも『正解』を強いることはできない。これまで使われてきた表記を尊重することも、方言の多様性を認めることにつながるでしょう」(飯間さん)

     ◇

 各社の国語辞書で「ほんま」を引くと、表記欄に「本真」を掲げているものが複数あります。ただ、表記欄には、その漢字を見れば語源が分かりやすいものが選ばれることもあり、必ずしも表記の歴史を反映しているとは限らないと飯間さんは指摘します。その上で、「表記欄に『本真』とあっても、それ以外を否定しているわけではありません」と話します。

本間「使う」「使わない」リアルな声

 「中高生時代、友だちとのLINEで本間を使ってました」。こう話すのは兵庫県神戸市出身の女性(28)。友人が使っているのを見て、仲間うちでのやりとりの際は自分も使うように。しかし言葉の意味と漢字が結びつかないことに徐々に違和感を抱き、大人になってからはひらがなを選ぶようになりました。

 大阪在住の会社員女性は、「漢字で書くよりも、『ほんまに』というひらがなのやわらかな見た目の方が好きです。知り合いとのやり取りでは『ほんまなん?』など、漢字は使わないです」。

 こんな意見も。人気お笑いコンビ「見取り図」の盛山晋太郎さんは今年8月、マッチングアプリ「with」のキャンペーン発表会の中で、「ほんまを『本間』と漢字で書く人が苦手」と告白。好きな女性のタイプは「重複を『ちょうふく』とちゃんと読める女子めっちゃ好き」と話しました。

 漢字以外のところでは、最近になり「ほんmoney」という表現も若者を中心に広がっています。人気クリエイターkemioさんの動画投稿がきっかけではないかといわれており、SNSの投稿文でも「ほんmoneyごめん」「ほんmoney楽しみ」などと使われています。

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