今秋、韓国で社会現象を巻き起こした受験戦争を描くドラマ「スカイキャッスル」が、日本版としてリメイクされ、大きな話題を呼びました。名門校への進学を目指すセレブ妻たちが「敏腕受験コーディネーター」に依頼しながら繰り広げる“マウントバトル”は、一見ドラマチックに見えますが、実はどこか現実の延長線上にあるからこそ、多くの人の共感を呼んでいるのかもしれません。
塾の保護者会での出会い
神奈川県に住むSさんは、大学付属の中高一貫校を目指し、息子が小学3年生のときから中学受験塾に通わせています。塾には近隣の小学校数校から子どもたちが集まってきていて、近年の中学受験の盛り上がりもあり、同級生90人ほどが在籍しています。毎月1回クラス分けテストが行われ、成績別のクラス分けがあります。
5年生の中盤になってくると、クラスのメンバーはほぼ固定され、塾の友達は学校の友達以上に仲良くなっていきます。ある日、塾で保護者会が開かれ、Sさんも出席。息子の会話で度々名前が上がっていた仲の良い友達の親御さんと初めて対面することができました。
その親御さんは、夫婦揃って出席しており、見るからに中学受験に対して熱心な様子。軽い世間話をしているうち、衝撃の事実が明らかになりました。
なぜ知っている?ほかの子どもの成績
会話の途中、その親御さんが突然、「前々回のテスト、A君(Sさんの息子)は算数が80点だったそうですね。とてもすごいですね!」と言ってきたのです。
「え、どうして知っているの?」と心の中で叫びながらも、冷静さを装って「ありがとうございます」と答えたSさん。成績は子どもたちそれぞれの個人情報なはず。各家庭でしか分からないはずなのに、なぜ伝わっているのでしょうか。
しかも、その親御さんは「Bちゃんは下の方のクラスだったのに、最近、成績が良くなってクラスも上がってきましたよね」「Cさんはいつも国語の点数が安定してますね」など、次々とほかの子どもの成績について、話し始めたのです。
塾の情報戦争、裏で何が起きているのか?
どうやらこの親御さん、塾に通う子どもたちの成績について、こと細かく把握している様子。しかし、なぜそのようなことが可能なのでしょうか? 塾側からは、テストの成績で保護者が一喜一憂しないよう伝えられていたので、Sさんもあまり気にしておらず、まして、ほかの子の成績については興味がありませんでした。
最近、仲良くなった別の保護者から聞くところによると、この親御さんは、送迎時に子ども同士の会話から細かい情報を聞き出し、それを分析しているのではないかとのこと。聞き出して分析するなんて、それはもう「成績スパイ」といえるのではないでしょうか。
中学受験における“情報力”の重要性
Sさんがネットで調べると、「中学受験は子どもにとって厳しい戦いであると同時に、保護者間でも見えない情報戦だ」と書かれています。誰がどのくらいの成績で、どこの学校を志望しているのか。どの学校が人気なのか、どれくらいの成績で合格できるのか…。情報力のある保護者は、わが子の成績を伸ばすヒントを探るため、ほかの子がどんな勉強をしてどのように成績を上げたのか、真剣に調べています。
この親御さんのように、他の子どもの成績を知ることで子どもの受験を戦略的にサポートする保護者もいるのでしょう。Sさんは、我が子の成績のことを深く気にせず、ただ「頑張ってね」と言っているだけだったのですが、それでは中学受験の厳しい現実に対応できないのかもしれないと、少し不安になりました。
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この記事のように「なぜそんな情報を知ってるの?」と驚いたエピソードはありますか?
▼40代・東京都
友人のご家庭はお父さんが頭がいいようで、塾のテキストや模試の問題は全てお父さんが解いてから、分析して、娘さんに教えているそうです。
それは別にいいのですが、この前話した時に「〇〇中学は、2年前に理科は地学が出たから、今年は物理かな?」とか、「〇〇中学は、3年おきに理科は雲の動きがでる」などと問題の傾向をよく語ってます。どうやら過去問を全て解いて、学校毎に頻出の単元を絞り込み、細かく分析しているようです。しかも志望校の5校全て数年分も!情報を知りたいのはやまやまですが、私にはとてもできないです。
▼50代・神奈川県
うちの息子の塾の友だちのお父さんは、うちの息子の苦手分野を分析してくれました。会う度に「計算力をもっとつけるために、短時間で正確にできるように訓練したほうがいい」とアドバイスしてくれて、計算力が上がるテキストまで教えてくれて、塾の先生より適切でした。おかげで息子の算数の成績があがったので感謝しています。
ただ、どうしてそこまで詳しく知ってるのだろうと今でも不思議です。
▼40代・埼玉県
とにかく情報通なママ友がいました。受験ブログを読み漁っていて、「この参考書のおかげで成績が上がった」とか「この問題集がいい」等会う度にアドバイスをくれました。また塾では誰がどんな参考書を使っているか聞き出し、暗記してるようでした。自分が耳にした問題集は全て買っていたようですが、結局子どもはそれをこなす余裕はなくて、受験が終わった後、未使用のままフリマアプリで売ったそうです。