※本記事には『ONE PIECE』第109巻以降の情報が含まれています。ご了承ください。
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の『ONE PIECE』(作:尾田栄一郎)には、多くの個性的なキャラが登場します。長く続く物語のなかで、初登場時とは大きく印象の変わったキャラクターも少なくありません。
たとえば、海軍大将のひとりである“黄猿”ことボルサリーノは“どっちつかずの正義”を掲げた人物で、腹の底では何を考えているのかわからないキャラクターとして描かれていました。
ところが「エッグヘッド編」では、今まで感情を見せることのなかったボルサリーノの人間的な面が数多く描かれました。コミックス108巻第1100話では、現在は人間兵器になってしまったバーソロミュー・くまと、その娘であるジュエリー・ボニー、そして天才科学者のDr.ベガパンクや部下の戦桃丸とともに楽しく過ごすボルサリーノの姿が描かれました。
しかしボルサリーノは、五老星のひとりジェイガルシア・サターン聖の命令により、Dr.ベガパンクや戦桃丸と戦わなければならない状況に追い込まれます。そして第1124話では、自身の”ピカピカの実”の能力でDr.ベガパンクを殺めてしまい、後悔に苛まれたボルサリーノが涙する様子が描かれました。初期のキャラクター性とはずいぶん異なり、人間味の溢れた人物として変化しています。
また、主人公であるモンキー・D・ルフィとかかわったことで、キャラクターが大きく変化した人物もいます。なかでも特筆すべきはルフィと同じ“最悪の世代”のひとりで、ハートの海賊団を率いるトラファルガー・ローです。
ローの初登場はコミックス51巻第498話です。その際には目の下にクマがあり、セリフのフォントもおどろおどろしく“死の外科医”という異名も相まって、強烈なキャラクターとして描かれています。同じく“最悪の世代”のひとり、ユースタス・キッドに突然中指を突き立てるなど、現在と比べるとかなり尖ったアクションを起こしていました。
ところが打倒四皇のためにルフィたちと“海賊同盟”を結び、行動を共にするようになってからはその性格に変化が現れます。何かと自由なルフィたちにツッコミを入れたり、振り回されたりと、苦労する様子が垣間見えるようになりました。
また「ドレスローザ編」では少年時代に“珀鉛病”という病気を患った過去や、“コラソン”ことドンキホーテ・ロシナンテとの深い絆も描かれ、多くのファンから愛されるキャラクターになっていったのです。
その他、ボルサリーノと同じく「エッグヘッド編」で新たな一面が描かれたキャラクターもいます。それは「ホールケーキアイランド編」で登場した女性、ステューシーです。彼女は当初“歓楽街の女王”と呼ばれ、裏社会の帝王のひとりとして登場しました。しかしそれは仮の姿であり、その正体はCP0の諜報部員だったのです。
物語が進みステューシーが再登場した際には、彼女の真の姿が明らかになります。なんと彼女は、20年以上にわたり諜報機関に潜伏していたDr.ベガパンク側のスパイだったのでした。しかしスパイという立場にありながら、同僚であるカクやロブ・ルッチにも親愛の情を持ってしまった葛藤など、優しくも切ない複雑な人物として描かれるようになりました。
これらのことから『ONE PIECE』の魅力のひとつは、キャラクターの深みと成長にあることがわかります。彼らの変化は読者の共感を呼び、物語をより豊かにしてくれることでしょう。