旅客機の窓から差し込む日光がまぶしいときは、乗客が自らシェードを下ろして光量を調節するのが当たり前だった。だが今、一部の機種ではシェードがなくなっている代わりに、窓の下にあるボタンを押せば、窓ガラスの色が暗くなる電子シェードが導入されている。これによってCAの負担が減って、駐機中の機内環境も改善されたという。電子シェードの導入について、全日空(ANA)と日本航空(JAL)に聞いた。
ボタンを押すと90秒ほどで暗さがMAXに
透明な窓ガラスの下にあるボタンを押すと、窓ガラス全体がじんわりと青みがかってきて、その色は次第に濃さを増して暗くなっていく。90秒程度で暗さはMAXになるが、完全な真っ暗ではなく、外の景色は見えている。
ANAによると「物理的なシェードと異なり、暗くすることで太陽の光を遮りながら、外の景色を見ることができるのが大きな特徴です」とのこと。
JALも「夜間フライトでも外が明るい場合は、窓を暗くしても空の景色をお楽しみいただけます」という。
窓から入る日光がまぶしいとき、シェードを下ろすと窓を物理的に塞ぐため、外の景色が見えなくなってしまっていた。電子シェードは窓を塞がないので、差し込む光量を減らしつつも外の景色を楽しめるのだ。
透明に戻すときは、同じくボタンを押し90秒程度で元の透明になる。
これは「電子シェード」と呼ばれ、窓ガラスの色を電気的に変化させることで、差し込む光量を調整できる設備だ。
「電子シェードには、電気が流れると化学変化により色が透明から暗くなる性質をもつ、エレクトロクロミックゲルと呼ばれる物質が使用されています。ボタンを押して電気が流れれば暗くなり、電圧を除けば透明に戻る仕組みです」(ANA)
ちなみにJALでは8月11日現在、日本航空グループのLCCである「ZIPAIR」の機材を含めてボーイング787の53機、A350-1000(ファーストクラスとビジネスクラス)の5機に電子シェードが装備されている。
電子シェードはCAの負担軽減とCO2削減に効果あり
電子シェードを導入したことで、CAの働き方にも大きな変化をもたらしたという。乗客が個別にボタンを操作できるとともに、CA側でもタッチパネルで一斉操作ができるようになっている。
「CAが旅客の状況を鑑みて適切なタイミングに遠隔でタッチパネルを操作することにより、お客様の座席にCAが立ち入ったりお客様の手を煩わせたりすることなく、シェードの明るさを調整し、快適な機内環境をご提供しております」(ANA)
「夜間フライトの際など、お休みのお客さまの邪魔をすることなくシェードを下ろすことができます」(JAL)
つまり乗客に動いてもらうことなくシェードを開閉できるため、CAの心理的な負担も大幅に軽減できるのだという。
用語の名残だろうか、電子シェードを暗くすることを「下ろす」、明暗の切り替えを「開閉」と表現しているようだ。
地上で駐機している際にも、シェードを一斉に下ろすことで機内温度を一定に保てるため、冷暖房の使用を抑えてCO2の削減になるとのこと。
そんな電子シェードが装備された窓際の席に座り、心地よい光の中で空を眺める、新たなフライト体験を味わってみてはいかがだろうか。
▽全日本空輸(ANA)
https://www.ana.co.jp/
▽日本航空(JAL)
https://www.jal.com/ja/