映画、ドラマ、舞台と幅広い活動が続く女優の吉岡里帆が、世界的に人気のトランスフォーマーシリーズ最新作『トランスフォーマー/ONE』で、自身初となる洋画の吹き替え声優に挑戦した。演じたのは若き日のオプティマスプライムやメガトロンと共に飽くなき戦いに挑むエリータ-1。トランスフォーマーの起源を描く作品は、過去作以上にエモーショナルでヒューマンな物語が展開される。吉岡は年齢を重ねるごとに、ヴィランに感情移入する自分がいるというのだ――。
勇猛な女戦士役に「丹田をしっかり鍛え直す」
本作は、将来トランスフォーマーをまとめる最強の司令官になるオプティマスプライムと、破壊大帝として恐れられる存在となるメガトロン。そんな敵味方として対峙する二人が若かりし頃、名もなき労働ロボットとして出会い、親友だった時代を描いた物語。吉岡が声を演じるエリータ-1は、彼らと共に戦いに出る女性戦士。本国では女優のスカーレット・ヨハンソンが声を当てている。
自身初となる外国映画の吹き替え。しかも勇猛果敢な女戦士を演じるということで、普段から続けていたというボイストレーニングを強化。「今回は吹き替えや声優さんを指導されているボイストレーナーさんにお願いしました。いつもよりも低い声が出せるように、丹田をしっかり鍛え直しましょうと指導を受けました」。
労働者ロボットたちが、厳しい状況に置かれるなか、夢を忘れずにチャレンジする姿に「すごく感動しました」と作品に強く感情移入したという吉岡。自分にもまだまだ可能性がある、自分のことを信じる力の大切さを作品から得たというと、そういったメンタルをエリータ-1というキャラクターに込めたという。
音響監督を務めたのは、過去何作品もシリーズを手掛ける岩浪美和。現場で言われたことは「声が甘くならないように」ということ。勇猛さを意識しながら臨んだアフレコ。1度すべて音を入れたあと、再度自分の声を聞き直して「ちょっとでも声に甘さが入っていたら、やり直しさせていただきました」と徹底してこだわりを見せた。
一方で、岩浪演出の特徴でもある砕けた感じもしっかりと取り入れた。「エリータ-1は、とても硬派な感じですが、バンブルビーとのやり取りではツッコミ的な立ち位置なんです。この作品でビーはとにかく喋るので、かなり砕けた感じのツッコミも入れています。その軽さはやっていて楽しかったです」。
大人になるにつれて、うまく自分を表現できないことって世の中にいっぱいある
本作の重要なポイントは、なぜオプティマスプライムとメガトロンが敵味方という関係性になってしまったのかが描かれていること。吉岡は「わたしは結構メガトロンに感情移入してしまったんですよね」とつぶやくと「メガトロンが悪に転じていくところなども納得がいってしまうというか、そうならざるを得ないよねって彼の気持ちも分かるような気がして」と感想を述べる。
その他の作品でも、ヴィランの存在に感情を持っていかれてしまうことが増えてきているという。その理由について「幼少期は私も『ヒーロー最高!』というタイプだったんですよ(笑)」と前置きしつつ「年々大人になるにつれて、うまく自分を表現できないことって世の中にいっぱいあるなと気づかされるんです。どうしても知識やしがらみなどいろいろなことが加わって、素直に自分の思いを相手に伝えられないことが増えていく。自分の思いとは裏腹な行動をとってしまうヴィランたちの気持ちも分かるんです」と説明する。
人生経験を積み、思うようにいかないなか、折り合いをつけて生活している人々、逆に折り合いがつけられず、否応なしに間違った方向に進んでいってしまうヴィランの気持ちも少しずつ分かるようになったという吉岡。「皆それぞれ正義の形は違う。もちろん破壊や攻撃などは悪いことなのですが、その行動に至るまでの傷をメガトロンが負ってしまったという背景もしっかり理解したいんですよね」と、表面的ではなく重層的に物事を見ることの大切さを説く。
「この作品はそんなことを考えさせられる映画、社会の縮図が描かれていると思います」と『トランスフォーマー/ONE』の魅力を語った。
映画『トランスフォーマー/ONE』は9月20日より全国ロードショー