北海道の小さな町に、インド人が急増中…その驚きの理由とは? 今や比率は東京・江戸川区の3倍 多文化共生の“未来モデル”として注目

襟川 瑳汀 襟川 瑳汀

2020年、浦河町はヒンディ語版母子手帳を配布

 浦河町の馬牧場が初めてインド人厩務員を受け容れたのが2015年のことで、人数は合計13名でした。それが10年足らずで344名(家族含む)にまで増えたのは既述の通り。浦河町じたいがインド人を呼び込む施策を打ったことはないので、これはインド人ネットワークの口コミで評判が広まった結果と考えられます。

 浦河町は、在住インド人にどういう施策を採ってきたのでしょうか。

 在住インド人が200人を超えた2020年、浦河町はヒンディ語版母子手帳の作成・配布を始めました。来日して5年が経過して、日本の気候や生活習慣にも慣れたインド人が母国から家族を呼び寄せて暮らし始めるケースが増えてきたことを受けての措置でした。ちなみにこの年の母子手帳の交付件数は5件、新生児は4名誕生しています。

 翌2021年には人材サービス関連企業のサポートを得て、「外国人生活支援調査事業」と称するプロジェクトを正式に発足させました。事業内容は、インド人(を中心とする外国人在住者)のニーズ調査、医療や買物・行政手続などの随行サービス、ヒンディ語による生活支援(電話対応)、日本語教室や交流会といったイベント企画などです。

 結果、この年だけでニーズ調査は61回行なわれ、随行サービスは439件、生活支援は465件、日本語教室は小規模なものを含めると218回開催されました。殺到した、といってもいいでしょう。インド人とその家族は母語による行政サービスを切実に望んでいたことがわかります。さらに翌2022年には、ヒンディ語に堪能な女性を地域おこし協力隊員として迎えました。

「外国人も同じ町民、日本人と同等の行政サービスを提供すべき」

「たとえ外国人であっても、同じ浦河町民である以上は同じ行政サービスを提供するべきだ。そんな思いで日々試行錯誤を続けています」と語るのは、浦河町役場・企画課の若林寛之係長です。

 浦河町の取り組みは、奏功しているといっていいでしょう。なぜならば外国人生活支援調査事業をスタートさせて以降、いっそう多くのインド人が浦河町に在住するようになったからです。特に、本国インドから呼び寄せられた家族が増えていることはここ数年の顕著な傾向で、昨2023年は38名と、前年比で倍近くの伸びになりました。「家族も安心して住める土地」と判断されるようになったということでしょう。

「もちろん日本の水に馴染めず、短期間で帰国してしまう人はいる。それでも傾向として、はっきりと人口が増え続けているのは、インド人の皆さんは浦河町での仕事や生活、環境におおむね満足してくださっている結果、と判断しています」(若林さん)。

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