傘寿を過ぎても途絶えぬ出演オファー 愛煙歴60年の藤竜也が卒煙した理由 「心肺機能がとても快調」

石井 隼人 石井 隼人

何事も「適度な頃合い」が大切だ。根を詰めすぎると無理が出るし、飽きも早くなる。82歳の俳優・藤竜也も、仕事やプライベートで適度を意識している。人生100年時代、生涯現役を支える秘訣とは。

日常をきちんと生きる

 『野良猫ロック』シリーズ、『愛のコリーダ』『ションベン・ライダー』『龍三と七人の子分たち』等々。そのフィルモグラフィーを振り返ると、ゾクゾクするようなタイトルが並ぶ。昨年2023年は『高野豆腐店の春』『それいけ!ゲートボールさくら組』と主演作が立て続けに公開。今年2024年7月12日には、第71回サン・セバスティアン国際映画祭で日本人初となる最優秀俳優賞を藤にもたらした『大いなる不在』が公開される。

傘寿を過ぎてもこの多忙。それにしても60年も俳優をやっていて…正直飽きてきませんか?

そんな愚問に藤は「ハハハ。これはね、やっぱり好きなんですねえ」と笑いながら「それに僕は飽きるほど仕事をしないからね。忙しそうに見えるけど、映画というものは撮影からしばらく寝かせる場合もありますから。タイミング的に続いて見えるかもしれないけれど、実際は1年に1作とかそんなもの。やり過ぎると僕は飽きちゃうからね。適度な暇がないとダメですね」

適度な暇がメリハリを生んでいるばかりか、生業とする俳優業にもプラスに働いているようだ。

「俳優にとって市民としての生活はとても大切です。自分の住んでいる地域で誰と付き合い、どのような出来事を体験し、それを自分がどのように感じるのか。俳優として与えられる役柄のほとんどが市井に住む人なわけですから、日ごろの生活での自分のありようが熟していなければ良い表現は出てきません。日常をきちんと生きる。それが基本。年がら年中虚構の世界で生きていたら、きっと僕は俳優としてダメになるでしょう」

なければないでもそれもいい

背筋もピンと伸びてかくしゃくとしているが、過度なトレーニングはしていない。体のメンテナンスは近所の公園を散歩すること。

「公園内を1時間くらい歩いたり、鉄棒にぶら下がってみたりね。若い頃はアクションシーンが多かったものだから、スポーツ選手並みに自分を追い込んでハードにやっていましたよ。流石に今それと同じことはできませんが、適度でいいからやり続けるのが大切です」

散歩中のマインドも適度にゆる~くするのが良いらしい。「あ、今すれ違った人はきれいだなあとか心の中で思ったりしてね」と茶目っ気たっぷり。愛煙家歴60年というタバコもコロナ禍を機にスパッと止めた。「心肺機能がとても快調になりました。階段を上がってもゼエゼエしなくなって良かったです」

多くを望まず、今まで通りの適度さで歩んでいく生き方。「生涯現役!という意気込みはないですね。俳優を辞めたとかやっているとか言う必要もなくて、自分だけが知っていればいいわけですから。今回は『大いなる不在』という恵まれた作品に出会って仕事をさせてもらいましたが、器の中に入れてもらう中で俳優は光るわけで。私一人がジタバタしたってどうしようもない。次にまたいいお仕事をいただけたら、それに向けて頑張るのみ。なければないでもそれもいい。そんな考え方で生きています」。肩の力をふっと抜いて、マイペースを貫いている。

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