映画「オッペンハイマー」 原爆開発した博士の孫、広島被爆者と面会 博士が広島長崎を訪れなかった理由とは

堀内 達成 堀内 達成

原爆を開発した物理学者、ロバート・オッペンハイマー博士(1904~67年)の生涯を描いた映画「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)が日本各地で上映される中、孫のチャールズさん(49)が来日した。初の広島訪問などに合わせ、東京都内の日本記者クラブで会見に臨み、祖父が広島や長崎を訪れなかった秘話などについて語った。

ロバート博士は戦後、原爆が投下されたことに苦悩。水爆製造に反対したことなどから公職を追われた。映画は米アカデミー賞で作品賞など7部門を受賞し世界中でヒット。一方、日本では原爆被害を直接的に描いていないなどの理由から公開が遅れていた。3日にあった会見では、被害が描かれなかった背景に「米国がまだ、広島と長崎の悲劇を直視したくないという思いがあるからでは」と質問が飛んだ。チャールズさんは「確かに直視したくない関係者はいるだろう」としながらも「映画に政治的な意味はない。あくまでもアーティストとしての選択と視点からストーリー展開されたと思う」と政治的意図を否定し、「(原爆を製造するため有能な科学者たちを集めた、ニューメキシコ州の研究拠点)ロスアラモスにいた人々の視点で映画を描こうとしたのだろう」と述べた。「私個人としては、映画の描き方についてはまったくコントロールする立場になかった」とも語った。

さらに1981年のドキュメンタリー映画「The Day After Trinity(ジョン・H・エルス監督)」をお勧め作品として挙げ「フィクションではなくドキュメンタリーで、広島、長崎に関する視点も含まれている」と話した。ロバート博士は1960年9月、原爆投下後、初めて来日。東京や大阪などを訪れたものの広島、長崎には立ち入らなかった。博士が亡くなった後に生まれ、父親らから祖父のことを聞いて育ったチャールズさんは「聞いたところによると、日本側のホストが『広島と長崎には行かない方がいいのでは』とアドバイスしたので従ったらしい」と明かした。また「静かに目立たない形でぜひ訪問したかったと思うが、騒がれてしまうことは避けられなかった。(訪問しなかったのは)妥当だったと思う」とした。

会見前の1日に広島市を訪れ被爆者たちと面会したチャールズさん。「被爆者のみなさんは、祖父の考え方を詳しく理解してくださっていた。祖父と(原爆投下に踏み切った)トルーマン元大統領の価値観の違いも分かっていた。親近感を覚えるほどだった」と振り返った。非営利団体「オッペンハイマー・プロジェクト」を設立して原子力の平和利用などを訴える活動をするチャールズさん。会見でも「原爆は二度と使ってはならない。原子力は、兵器ではなくエネルギーとして使うべきだ」と強調した。

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