創業者の多くが石川県などにルーツを持ち、北陸地方とのつながりが特に深い京都市内外の銭湯有志が、1月の能登半島地震で打撃を受けた石川県の銭湯に義援金を贈った。「1日も早い復興を」「踏ん張って」。思いを込めたメッセージも届けた。今後も、銭湯仲間として、京都から心を寄せ続けたいという。
京都市には約80店の銭湯があり、7~8割が北陸との関連があると言われる。雪が多い冬の仕事を求め、最も近い都会地である京都に来て、銭湯を始めた北陸人が少なくない。昨年閉業した上京区の白山湯は、石川県の名峰「白山」から名を取った。同県出身の父が創業した小町湯(下京区)の経営者で、京都府公衆浴場業生活衛生同業組合(中京区)の広報担当を務める蒔田高明さん(53)は「(創業者に北陸の人が多いのは)頑張り屋の気質も一因ではないか」と推測する。
北陸にゆかりがある京都の経営者にとって、大きな被害をもたらした能登半島地震は衝撃的で、人ごとではなかった。蒔田さんらが声かけをして義援金を募ったところ、52軒から51万4千円が寄せられた。蒔田さんは「当初は、20万円集まればいいなと思っていた。本当にうれしかった」と、仲間の温かい志に感謝する。
被災地では、設備への打撃で廃業を余儀なくされた銭湯がある一方、風呂を開放して被災者の心身をいやし、衛生面の向上に尽力している銭湯もある。同組合は、燃料代などに役立ててもらおうと、義援金を同県公衆浴場業生活衛生同業組合に贈った。「がんばれー!!」「入浴を楽しみにしておられるお客様のためにもがんばって」としたためた寄せ書きも届けた。
同県組合は「銭湯を使命とし、踏ん張っている組合員に届けたい」と感謝した。
銭湯の全国団体も寄付したが、個別の組合による義援金贈呈は京都が初だったという。
蒔田さんは「すごく喜んでもらい、取り組んだかいがあった。災害はいつ起きるか分からない。銭湯は災害時に必要な存在であり、銭湯の社会的な存在意義も伝えていきたい」と話した。