しっぽと足を失った野良の黒猫 「外では生きていけない。家族に迎えたい」 保護団体に緊急相談が寄せられた  

渡辺 陽 渡辺 陽

怪我をしていた黒猫

クロちゃんは、2016年5月、後ろ脚1本と尻尾がない状態で発見された。発見者のDさん夫妻は、愛護団体NPO法人ねこけんにクロちゃんを保護したいという相談のメールを送った。

「メールには『けがのカ所が濡れていて、血が落ちていて、弱っているようです』と書かれていました。しかも、『その子を捕まえて治してあげたい。治した後、しばらくは保護しないと外では生きて行けない。自分で家族にします』とつづられていました。私たちは思わずメールを二度見しました。」

1本脚がないけがをしている猫を治してあげるだけではなく、その子を家族に迎えたいという人は珍しかった。スタッフは代表に連絡して急いで出動し、Dさんと現場で落ち合った。

「クロちゃんは車の下でじっとしていました。暗くてうずくまっているので状態が確認できませんでしたが、とにかく捕獲器をかけると立ち上がり、そろそろと近づいてきました。確かに、体の下から血が数滴落ちていてけがをしていることは分かりました」

スタッフは「食欲はまだある!これなら入りそう!入って!」と願ったが、細い路地に囲まれた現場は人通りも自転車も多く、けがをしているクロちゃんは、自転車の音に驚いて走り去ってしまった。その後は、待てど探せど見つからなかったという。

3本脚になったが、幸せをつかむ

深夜2時、心配で眠れないスタッフと代表が再度現場へ行ったがクロちゃんの姿はなかった。3人で明け方まで探したが見つからず、仕方なく一度撤収したという。

どんよりした気持ちのまま朝を迎えたが、Dさんが仕事を休んで現場に行くとクロちゃんがいた。「今、いるんです!」との連絡を受けスタッフは現場へ急行。運よく1匹で居るところに捕獲器をかけると、無事保護できた。

ねこけんのかかりつけの動物病院は休日にも関わらず診察してくれた。明るい診察台の上で見ると、確かに後ろ脚の膝から下と尻尾がなかった。傷口が盛り上がっていたので、少し時間が経っているようだった。年齢はまだ若い。

「犬や野生動物に襲われたのか交通事故に遭ったのかは分かりません。手術を終えて三本脚になりましたが、Dさんの家族として迎えられました。猫にとって外の世界は危険です。これからは安全で安心に暮らすことができます」

Dさん夫妻は、ペット可の物件に引っ越し、黒猫を「クロ」と名付け、一緒に暮らし始めた。野良猫だったクロちゃんが心を開いてくれるのを気長に待つつもりだったという。

1カ月後、クロちゃんがおもちゃで遊ぶ写真がねこけんに送られてきた。すっかりリラックスした表情。クロちゃんは幸せをつかんだ。

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