メガホンと動物の顔がデザインされたロゴマークには、「モノ言えぬ動物たちを代弁する」という想いが込められています。NPO法人『どうぶつ弁護団』が設立されたのは2022年9月。理事長をはじめ役員は弁護士や獣医師で構成されており、言葉を話せない動物たちに代わって動物虐待事件に関する刑事告発等を行い、その防止につなげるための活動をしています。
「動物虐待を防ぐには、実際に起きた事件を検挙し、適切な処罰が下されることが必要です。それが抑止力になるからですが、動物は自ら被害を訴えることも、告発することもできません。飼い主がいない動物の場合、虐待を発見したボランティアさんなどから我々弁護士が依頼を受け告発することもありましたが、個人が費用を負担しなくていい仕組みを作れればと『どうぶつ弁護団』を立ち上げました。費用は賛助会員の皆様からのご支援で賄いますので、情報提供者の費用負担はありません。専用フォームから情報提供を受け付け(受付はWEBのみ)、専門知識のあるチームが事実や証拠を整理した上で、告発等の手続きを行います」
団体の活動内容について説明してくださったのは、理事長を務める細川敦史弁護士。「モノ言えぬ動物たちの代弁者として、おせっかいする組織です」と付け加えてくれましたが、その“おせっかい”がどれほどありがたいか。それは、4月11日に警察庁が発表した数字を見ればわかります。
2023年に動物虐待の疑いで警察が立件した事件は全国で181件、206人を摘発しました。いずれも統計開始の2010年以降で最多です。虐待件数そのものが増えたというよりは、動物愛護への意識の高まりなどにより、通報や相談が増えた結果だと思いますが、こうした事件に対して法律にのっとった適切な処罰が下されることこそが、細川弁護士の言う“抑止力”となるはずです。
動物虐待を決して許さない
4月25日、奈良県王寺町に住む49歳の男性に対して、動物愛護法違反、銃刀法違反などの罪により「懲役1年6か月、執行猶予3年」の有罪判決が確定しました。男は昨年12月、王寺町の河川敷で自作の空気銃を使って猫を撃ち、ケガをさせたのです。猫の左前脚には長さ約3センチの鏃(やじり)型に尖らせた金属が刺さっており、発見が遅れていれば脚を失う可能性もありました。
発見者から相談を受けた『ねこから目線。』という会社(関西圏を中心に活動しているノラ猫・保護猫専門のお手伝い屋さん)が保護と通院治療を行い、どうぶつ弁護団に情報提供。どうぶつ弁護団が警察に告発し、男が起訴されていたのです。
今回の事件を担当したどうぶつ弁護団の岸本悟弁護士はこう話します。
「当法人で刑事告発した事案で初めて犯人が逮捕され、有罪判決を受けました。動物虐待をする者は犯行を繰り返す傾向があります。エスカレートすると、人間を襲うことにもなりかねません。その前に犯行を止める、また、社会全体で『動物虐待を決して許さない』というメッセージを送るために、当法人は活動しています」
どうぶつ弁護団が掲げる設立の目的は「人と動物の共生社会を実現すること」。猫や犬を中心にペットを飼う人が増え、「ペットは家族」という認識も定着してきました。そして、先述の警察庁発表による動物虐待事件は牛、馬といった家畜が対象のケースもあります。もちろん、奈良の事件のように特定の飼い主がいない場合も。広い意味での「動物」と人間が共生できる社会を――。その一翼を担うどうぶつ弁護団の細川理事長は、「こうした活動をできる弁護士が全国に増えてくれれば」と望んでいます。
◇どうぶつ弁護団ホームページ
https://animal-dt.org/