自宅の合鍵を知らない間に他人に作られ、部屋に侵入される-。京都府警が逮捕した男(21)は、知人女性の鍵に刻印されている番号を盗み見て、インターネットで注文したという。全国各地でも同様の手口が相次いでおり、無防備な点を突いた犯行に対し、鍵メーカーは不正な方法で合鍵が作られないよう対策を強化し始めた。府警も「他人に鍵の番号を知られるのは、鍵を渡すのと同じ」と注意を呼びかけている。
下鴨署によると、男は滋賀県草津市に住んでいた大学生で、2022年6~7月、アルバイト先の同僚女性(21)宅に本人不在の時間帯に立ち入ったとして、住居侵入の疑いで昨年9月に逮捕された。男は女性の鍵に刻印された番号とメーカーをひそかに記録し、ネット注文を通じて合鍵を取得したという。
女性は鍵を盗まれていないため、忍び込まれたことを知らなかったという。同署は、別の女性に対する盗撮事件の捜査の中で、合鍵の犯行を割り出した。男が女性の鍵のナンバーを盗み見た方法について、アルバイト先で女性の荷物から鍵を取り出し、スマートフォンで撮影したとみている。
相手にばれないよう、合鍵をネットで作成して悪用する事件は全国で起きている。昨年3月には、元同僚の女性宅に侵入し下着などを盗んだとして名古屋市の男が逮捕された。北海道では同5月、男が元交際相手の女性宅に侵入し、殺害する事件が発生。いずれも鍵番号を盗撮するなどして、合鍵を作成したとみられる。
日本ロックセキュリティ協同組合(東京)によると、一部の特殊な鍵を除いて、純正の鍵に刻印されている番号などが分かれば、合鍵販売サイトで購入できてしまう。組合加盟業者に注文者の本人確認の徹底を呼びかけているが、限界があるという。
対策に乗り出している企業もある。大手鍵メーカー「美和ロック」(東京)は合鍵のネット注文を受ける際、鍵の写真を求める。広報担当者は「不自然な点があれば、注文を受け付けない」と話す。さらにオプションとして、鍵の番号と異なる番号を記載したIDカードを発行し、鍵とIDカードの番号がなければ注文できないサービスを整え、不正行為に備えている。
下鴨署は事件を受け、手軽にできる防犯対策を考案した。鍵番号を隠すシール付き配布物を作成した。銀色で、長さ約2センチ、幅1・5センチほどと小さいが、シールは番号を隠すだけでなく、剝がすと「開封済」という文字が浮かび上がり、番号が見えない特殊な素材を使用。管内の大学生らに約1500枚配布した。
府内の空き巣・忍び込みの発生件数は2022年に227件と、5年前の489件からほぼ半減しているが、吉岡宏典副署長は「ネットのサービスを悪用した不正利用は身近に起きると実感してもらいつつ、鍵を他人に安易に見せてはいけないことも認識してほしい」と訴える。