ストーリーに不穏な展開をもたらす「裏切り者」の存在。なかでも、信頼のおける仲間と思っていた者の裏切りは、ショックが大きいものです。
『ONE PIECE』カン十郎
最近でもっとも筆者がショックを受けた裏切りキャラは、『ONE PIECE』のカン十郎でした。
カン十郎は、かつてワノ国の大名・光月おでんに仕えていた赤鞘九人男の1人です。作中ではドレスローザで初めて登場し、麦わらの一味と行動を共にしていました。
ワノ国編では、敵であるオロチやカイドウを討つため、仲間とともに綿密な計画を立てて行動します。しかし、なぜかオロチにことごとく計画がバレるという事態が発生。コミック96巻ではカイドウとの最終決戦のために鬼ヶ島へ向かうなか、赤鞘九人男の中で内通者の存在が疑われるのです。そして、カン十郎はそれまで同志だった赤鞘九人男たちの前で、自分がオロチの親戚である黒炭家の人間で、オロチのスパイという本性を明かすのでした。
それまで怪しまれるような素振りはなかったカン十郎の裏切りは、仲間たちに衝撃を与えました。スパイでありながら、心からおでんの家臣になりきる異常性で「あんな長い間、赤鞘九人男と一緒にいたのに…」「死ぬこともためらわないなんて単なる裏切り者じゃなくマジな狂人」など、ネット上では信じがたい裏切りでショックを受けたファンの声が多くあがっていました。
『進撃の巨人』ライナー・ブラウン
また、『進撃の巨人』のライナー・ブラウンも衝撃的な裏切りキャラとして有名ではないでしょうか。
ライナー・ブラウンは人類の脅威である巨人に立ち向かう調査兵団の1人で、主人公エレン・イェーガーが所属する104期訓練兵団の同期です。訓練兵の中でも高い戦闘能力と統率力で頼れるリーダーのような存在でした。
同期が巨人に襲われそうなときには身を呈して守るなど仲間思いな一面もあり、周りからの信頼も厚いため、立派な兵士へと成長することを期待したファンもいたでしょう。しかし、その正体は巨人から身を守る壁を破壊し、エレンたちの運命を狂わせた「鎧の巨人」であることを自ら明かします。それも、付近で兵士たちが巨人への対策を話す傍ら「俺が鎧の巨人で、こいつ(ベルトルト)が超大型巨人ってやつだ」と、あまりに自然なノリでカミングアウトをはじめたのです。
ライナーは敵国マーレの戦士で、同郷であり同じ104期生のベルトルト、アニとともに「座標」と呼ばれる力を持つ始祖の巨人を、故郷に連れ戻すことを目的に兵団に潜入したのです。しかし、罪の意識から精神的に追い詰められた結果、驚きのタイミングで仲間に正体を告白。「こんな衝撃発言が強調されずさらっと出てきて新鮮な裏切り方だった」「受けてきた教育も文化も違うのに溶け込んでたのすごい…」など、ネット上にあがっている声があがっており、ファンに強烈なインパクトを残したことが分かります。
『BLEACH』藍染惣右介
その他にも、衝撃的な裏切りキャラといえば『BLEACH』の藍染惣右介(あいぜんそうすけ)も忘れられません。
藍染は、死神たちの治安維持組織である護廷十三隊の元五番隊隊長で、温和な雰囲気が印象的な紳士です。知性溢れる人格者として周りからも絶大な信頼を得ていた人物でした。しかし、主人公・黒崎一護に死神の能力を譲渡したことで咎められた死神・朽木ルキアの処刑が決まり、彼女を救おうと奮闘する者たちによる騒動が起こるなか、藍染は何者かに殺害されてしまいます。
ところがその後、藍染は自分を深く敬愛する部下の雛森の前に姿を表し、彼の生存に安堵して涙を流す彼女を刀で貫くという、別人格のような冷酷さを露にします。藍染の死は、自身の野望に必要な「崩玉」を手に入れることを目的に偽装されたものでした。
自分の目的のために部下を躊躇なく殺害する非道さなど、それまでの温厚な印象からは想像できない本性が明かされ「藍染ショック」と呼ぶファンもいます。
その後藍染は、最大の敵として、黒崎の前に立ちはだかる存在となりました。底知れぬ戦闘力や、「あまり強い言葉を使うなよ 弱く見えるぞ」「憧れは理解から最も遠い感情だよ」など、辛辣ながら本質をついた名言で絶大な存在感を放ち「悪のカリスマ」として人気を博しているキャラのひとりといえるでしょう。