亡き父から30年越しに届いた手紙に涙…「君が生まれてきて嬉しいです」鮮やかに蘇るあの夏休み最終日の情景

渡辺 陽 渡辺 陽

もしも人生につまづいた時、あなたの拠り所になるのは何でしょうか。ほうけ医師/泌尿器科専門医・指導医さん(@phimo_surgeon)は、ふとしたことがきっかけでそれを見つけ、Xに投稿しました。

「30年前の父から届いた手紙。思わず涙がこぼれた。

父は数年前に亡くなった。好きに酒を飲み、タバコを吸い、ギャンブルをして、自分勝手に生きた人だった。今回実家の引越しの手伝いをしていた時、ふと私が幼少期に作った不格好な粘土細工が目に止まった。まだ小学校低学年、夏休みの宿題に父と一緒に作ったものだ。

『この中には宝の地図が入っているから、俺が死んで困ったことがあったら開けてみな』と、父が笑顔で言ったセリフが思い出された。

開けると言っても、粘土細工だから壊すしかない。若干の罪悪感を感じながら、庭でハンマーを使って叩き割った。

そこに入っていたのは、宝の地図ではなかった。相変わらず達筆すぎて読みにくい父からのメッセージ」

書かれていたのは、思いがけないメッセージでした。

30年前、幼い息子に宛てて父が書いていた手紙

「君が生まれてきて嬉しいです。貴方のような子に恵まれて私は果報者です。人生を大切にしてください。美しいものを探す旅になると父さんは嬉しいのですが。淋しくなったら本を読んでください。私はいつもあなたと一緒にいます。父より。 1995.8.30」

ほうけ医師/泌尿器科専門医・指導医さんは、

「我が親ながら、美しいメッセージだと思った。書かれた日付から、夏休みの最終日に父と急いで宿題の粘土細工を作った当時を思い出して苦笑い。裏には私が当時ハマっていた漫画『ラッキーマン』に出てくる努力マンの落書き。
そんなものの裏にメッセージを書いて残そうとするあたり、照れ屋の父らしくて泣き笑いになった」

と続けました。

「貴方の子供は元気にやってるよ。貴方の孫はきっと凄いやつになるよ。そう伝えてあげたいと思った。

私の子供にもそろそろメッセージを残すことにした。私と違い最終日に宿題をやらない優秀な彼の、不格好な作品の中に父親からの愛を忍ばせておこう。夏休みまでは幸いまだ時間がある。しっかりと文章を考えて、いつか彼が最高に泣けて笑えるヤツを、仕込んでおこうと思うのだ」

じんわり心に刺さるポストには感極まったコメントが続々と寄せられ、「いいね」は7.2万件にもなリました。

「こんなの見つけちゃったら絶対泣いちゃいます。美しいものを探す旅。お父様の言う宝の地図は、人生の道しるべとなるもののことだったのかもしれませんよね」

「この手紙は一生の宝物ですね。深い愛情が感じられます。きっとずっとそばで見守っていてくれていると思います」

「他愛の無い思いで書いた手紙かもしれませんが、30年近い月日が流れるとグッと胸に迫る文章になるのですね。残しておくことの大事さですね」

「私も昨年、父を亡くしました。私が幼い頃に離婚し、いくら周囲から何を言われようとも、好き勝手に生きた父でした。父は何も残さなかったけれど、会う度に私の事を『宝物だ』と言ってくれた声は忘れません」

投稿者に話を聞いた

ほうけ医師/泌尿器科専門医・指導医さんにお話を聞きました。

ーーこのことは覚えていたのですか。

「7歳ごろのことなので、ほぼ完全に忘れていました。たまたま粘土細工を見て思い出した感じです」

ーー奔放に生きていても、愛情深い方だったのですね。

「父にとっては自由に生きることが、人生を大切にすることだったのかもしれません。人によって、人生のイベントの優先順位は違うと思います。それでも、よくキャッチボールをしたり釣りに行ったりして、父とは楽しい思い出がたくさんあります」

ーーお父さんにとって、「美しい人生」とはどんな人生だったのでしょう。

「人生は基本的に嫌なことや避けていきたいことの連続です。ただ、そういったものを乗り越えた達成感は何ものにも代え難く、そうした経験を積んで欲しいという意味もあると思います。また、家族や仲間との絆を大事にすること、実際に美しい絵を見たり本を読んで心穏やかに過ごすことも含まれていそうです」

ーーこの手紙は、人生の礎になりそうですね。

「家族を愛するということは当たり前だと思うのですが、残念ながらそうではない家庭も医師としてたくさん見てきました。ただ、多くの家庭では、子どもの幼少期は輝かしい思い出なのではないでしょうか。父に愛されていたことは、確かに拠りどころになっていると思います。ただ、手紙があるから頑張れるというよりも、疲れきった時に手紙を思い出して少し元気をもらう、そんな感じです」

学生時代は、お父さんへの反発心もあって、猛勉強して医学部に進学したというほうけ医師/泌尿器科専門医・指導医さん。お父さんはたいそう喜んでくれたそうです。今でも遠いところから息子のことを見守っているのでしょう。

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