2024年1月から導入された新NISAは、旧NISA制度を改良し、非課税保有期間の無期限化や年間投資枠の拡大によって、さらに投資しやすい制度となりました。しかし新NISAでも旧NISAと変わらず、元本が保証されているわけではないため、元本割れが生じて損してしまう人もいるようです。
30歳の独身会社員Aさんは、友人から「つみたてNISAをすればお金が増える」という話を聞き、2019年につみたてNISAを始めました。Aさんはお金が増えることを期待して、毎月3万円をつみたてNISAで運用。最初は順調に利益が出ていましたが、2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きな損失が出てしまいました。
お金が減ってしまうことが怖くなったAさんは、1年間積み立てた資産をすべて売却し、約5万円の損失を確定させてしまいます。
Aさんのように、NISAで元本割れが生じるケースは多いのでしょうか。また、どうすれば元本割れリスクを軽減できるのかを新NISAに詳しいFPの松本愛さんに聞きました。
目先の値動きに一喜一憂せず、長期的な目線で投資を続けて
――新NISAでも元本割れで損してしまう可能性があるのでしょうか。
新NISAも旧NISAも元本が保証された投資ではないため、元本割れする可能性はあります。しかし、元本割れリスクを小さくするためのポイントを押さえれば、損する可能性を下げられます。
――元本割れリスクを下げるためには、どうすればよいのでしょうか。
元本割れリスクを軽減するためには、「長期・分散・積立投資」を心がけることが大切です。複数の投資先に毎月一定額をコツコツ積み立てて長期間運用することで、元本割れリスクを下げられます。
Aさんに損失が出てしまったのは、つみたてNISAを始めてからわずか1年で売却してしまったことが大きな原因であるといえます。
新NISAに限らず投資では、価格変動によって運用期間中に損失が出てしまうことがあります。しかし、目先の値動きに一喜一憂するのではなく、数十年という長期的な目線で投資を続けることが大切なのです。
金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」によると、5年間よりも20年間の投資の方が元本割れの可能性が下がることが過去のデータから示されています。
――どうしても元本割れが怖い人は、新NISAを始めない方がよいでしょうか。
貯金だけでは、インフレが起きたときにお金の価値が下がって損してしまいます。元本割れリスクが怖いからといって新NISAを始めなければ、インフレによって貯金が目減りし、生活が苦しくなってしまうかもしれません。
新NISAのつみたて投資枠は、金融庁が長期・分散・積立投資に適した投資対象商品を厳選しており、最低100円から投資を始められます。元本割れが怖い人は、少額から新NISAを始めてみましょう。
◆松本愛(まつもと・あい)/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
金融ジャンルの専業ライターとして、お金の知識を分かりやすく伝えるために活動中。さまざまな金融メディアで記事執筆をしており、主に保険、税金、資産運用の情報に精通している。