2021年6月、滋賀県のある場所に4匹の子猫が捨てられていました。ただ捨てられていただけではありません、まだへその緒がついていたその子たちの足は、針金でくくられていたというのです。
「虐待を通り越して猟奇的なものを感じました。手のひらに乗るくらいの子猫の足は本当に細くて小さい。それを針金でくくるって…」
そう話すのは、子猫を発見した知人から連絡を受け、動物病院へ付き添った浜田才知子さんです。傷口が化膿し命が危ない子もいましたが、救えるものなら救いたい。その一心で2人は2匹ずつ引き取り、自宅で世話を始めました。
「先生にもらったシリンジで2時間おきにミルクをあげました。1匹は足がちぎれていて、そこから感染症になったのでしょう、パンパンに腫れて…翌朝、亡くなってしまいました。でも、もう1匹はうっ血していただけでまだ軽症だったんです。だから、もしかして生きてくれるんじゃないかと」
浜田家にやって来た2匹は人気の絵本から取って「ぐり」と「ぐら」と名付けられたのですが、ぐりが旅立ったとき、ぐらはぐりの体をずっとなめていたそうです。「まだ目も見えていないはずなのに、やっぱり分かるんですね」と浜田さん。お母さんと引き離され、一番近くにいたきょうだいもいなくなり…どれだけ心細かったことでしょう。
犬や猫も子育てに参戦
それでもぐらりん(浜田家ではこう呼ばれています)は頑張りました! 免疫力が弱く、また夏場だったこともあり、油断するとすぐ傷口が化膿して、足先が腫れておかしな歩き方になったこともあるそうですが、浜田さんの懸命のお世話の甲斐あって、ぐらりんは今も元気に生きています。
浜田さんはペンションを経営していて忙しい毎日の中、保護から2か月はぐらりんをカゴに入れてそばに置き、できるだけ一緒にいたそうです。どうしても手が離せないときは、当時いた2匹の犬、ボンボンちゃんと2代目プリンちゃんが代わって“子育て”をしてくれたとか。
「ボンボンは19歳、プリンは18歳でしたから、おばあちゃんたちが孫の面倒を見てくれていた感じですね。ぽーちゃんとにゃーちゃんという猫たちも寄り添ってくれました。2匹は男の子だから“お父さん”役。特ににゃーちゃんは子育てが上手で、ぐらりんが危ないことをしそうになると、首のところを噛んで教えてくれていました」
こうして人と犬と猫に育てられたぐらりんは今、ペンションの看板犬でもある3代目プリンちゃんと大の仲良し。自分より年下のプリンちゃんの“教育係”として存在感を発揮しているそうです。自分が育ててもらった恩返しなのでしょう。
ぐらりんのほかのきょうだい、第一発見者の家に引き取られた2匹はというと、1匹は残念ながら助かりませんでしたが、もう1匹は一命を取り止め、幸せに暮らしているそうです。
ぐらりんの成長は「森の隠れ宿ペンションシープ」のインスタグラム(@sheepnature)でも見られます。