2022年5月下旬、ある民家のガレージに住み着いた母猫1匹と、きょうだい猫4匹が捕獲・保護されました。これらは保護猫団体、LOVE & Co.(以下、ラブコ)のスタッフが行い、その後、新しい里親さんとのマッチングを目指しお世話をし続けていましたが、このうちの1匹・タイ哉は4きょうだいの中でも病弱で成長も遅めでした。
保護当初、患っていた猫風邪を克服したものの、それから数カ月後には、FIP(猫伝性腹膜炎)を発症。猫好きでなくてもこの病名は聞いたことがあるという人もいるかもしれません。FIPは致死率が高い恐ろしい病気なのです。
無治療の場合は中央生存期間は9日
FIPは、ネココロナウイルスを発端とした変異型FIPウイルスを原因とし、主に若い子猫で発症するとされています。進行が早く無治療の場合、中央生存期間は9日とされます。
確固たる治療方法がなく症状も多岐にわたり、その判断はかなり難しく、放っておけばあっという間に手遅れになることも。一般に複数の猫同士の接触が多い、野良猫やブリーディング猫の間で蔓延しており、子猫が発症するケースが珍しくありません。
ラブコの代表はこれまでお世話してきた子猫の具合が悪くなり、動物病院に連れていく際、「どうかFIPだけではありませんように!」と祈っていました。過去に、代表の自宅にいた猫が2歳でFIPを発症し10日ほどで天国に行ってしまったからです。
具合が悪くなったタイ哉を動物病院に連れていくと、診断結果はFIPでした。
84日間の治療費は100万円
タイ哉のFIP症状は食欲不振、下痢、発熱、軽い貧血、黄疸、栄養失調など。FIPを発症した猫のケースでは、初期とは言えないものでしたが、幸い神経症状はなく、手遅れという段階ではありませんでした。
獣医師が処方してくれた薬の効果は抜群で、初回の注射でみるみる元気になってくれました。その後は食欲も出て、下痢も治り、元気いっぱい。まるで一瞬で完治したかのように見えましたが、再発を防ぐために薬を84日間継続して与えないといけません。
タイ哉のFIPが深刻なものでなく克服できる見込みがあることを喜びました。しかし、問題は治療費です。素晴らしい薬ではあるのですが、84日間継続してタイ哉に与え続けることで100万円前後の膨大な費用がかかると言います。
ラブコは「保護猫がはたらく会社」を自称しており、保護猫たちをモデルにして代表が描いたイラストをあしらった様々なグッズを販売。その利益で、保護猫のお世話にかかる費用を捻出するというユニークな取り組みをしています。このグッズ展開で、薬にかかる費用がどれだけ補填できるかはわからないものの、代表はすぐにタイ哉の応援グッズなどを作り、治療と合わせて販売することにしました。
投薬期間延長を経て闘いが終わったかと思いきや…
FIP治療中のタイ哉は一時里親募集をストップ。途中再発のような兆候もあって投薬期間延長となり、医療費総額は結局200万円近くになってしまいましたが、やっと「いったん問題なし!」の検査結果に。その後、約1ヶ月間の要経過観察となりました。
このまま無事に寛解してくれることを願う代表でしたが、その思いはかなわず、経過観察を終えようとした約1カ月後、FIPを再発してしまいました。再発の最初の兆候として「食欲不振などがある」と聞いていた代表でしたが、タイ哉の場合は食欲はあり、活動の低下が見受けられました。
「食欲はあるけれど、なんか変」と思い、念のため動物病院に連れていったところ、発熱と、胸水があり、FIPの再発が認められました。そして再発の場合は、前回の薬よりも、さらに高い濃度の薬で治療する必要があります。しかし、代表は諦めません。
「ウイルスはなかなか手強いです。そのウイルスに『私に勝てると思うなよ。バカめ!』という強い気持ちを持って、タイ哉の治療に挑みました」
寛解したタイ哉に「ずっとの家」が見つかりますように
ラブコ代表の想い、そしてタイ哉自身の「生きる」という強い想いが見事ウイルスをやっつけ、後に完全に寛解することとなりました。
タイ哉は再び元気を取り戻し、本来の性格の好奇心旺盛な一面、甘えん坊な一面を見せてくれるようになりました。趣味は、トイレの砂のかき混ぜ。そんなかわいいタイ哉の姿を見ると、「元気になってくれて本当に良かった」と喜ぶ代表でした。
一時中止していた里親募集も再開。現在もラブコ公式サイトで募集しています。小さい体で恐ろしい病・FIPと闘い見事克服。かわいくたくましいタイ哉に1日も早く「ずっとのお家」が見つかることを願うばかりです。
LOVE & Co.
https://love-and-co.net/