ジュエリーブランド「R ETHICAL(アール・エシカル)」の代表を務める星まりさんの愛犬カノンちゃん(雌・9歳)。ブリーダーに飼われていたチワワの繁殖引退犬です。星さんとカノンちゃんとの出会いは、2018年のこと。東京都内のとある動物保護団体が開いた保護犬の譲渡会でした。保護犬をおうちにお迎えしようと、星さんは旦那さんや2人の娘さんとともに会場に足を運んだところ、端っこの机の下で隠れている1匹の小さな犬を見つけました。
「隠れていた小犬はカノンでした。他のワンちゃんたちは譲渡先が決まっていたようでしたが、カノンだけ決まらず。カノンのように人間が怖い子やなれない子はなかなか里親さんが見つからなかったみたいです。また5歳だというのに当時はとても小さく痩せていました。震えていて自分からは人に近付かない。誰かが来ると怖くて動けなくて固まる…そんなタイプだったと思います」
そんな臆病で人が近付いてくることをとても怖がっていたというカノンちゃん。しかし、旦那さんが近寄って手を伸ばすと、しっぽを振って喜んだといいます。
「私の方が犬好きなのですが、夫は犬を飼ったことがなくなれていなかったにもかかわらず、カノンは夫に心を許したんです。驚きました。まさに運命の出会い。団体の方から聞いた話ですと、2週間くらい譲渡先が見つからなかったとのこと。決まらなくてここにずっといてもかわいそうですし、夫に心を許していた様子を見ていて、カノンをおうちにお迎えすることをその場で決めました」
引き取った日から何も食べず飲まずで病院へ 腸ねん転を起こしたのは?
こうして星さん家族はカノンちゃんと”運命の出会い”を果たし、おうちに連れ帰りました。そして、当時のカノンちゃんのことを、星さんはこう振り返ります。
「おそらくケージの中にしかいない状態で育っているので、誰かに触られることも嫌。外の音も苦手だし、お散歩しようと思っても車や工事の音も怖い、子どもも怖い。階段の上り下りもできませんでした。小さい頃に全く経験のないことだらけだったのか、いろいろなことを怖がっていました。また栄養が十分でなかったためか歯も1本もない子でした。それに引き取ってから3日くらい何も食べなくて、とても心配したんです。一度食べたと思ったら吐き出して、再び食べず飲まずになり、病院に連れて行ったところ、腸ねん転を起こしていたことが判明。獣医師さんから『すぐに手術をしないと死んでしまう』と告げられ、即手術・入院となりました」
手術は、おうちにお迎えした日から1週間後のことでした。星さんはカノンちゃんが繁殖犬だったことを獣医師に伝えたところ、腸ねん転を起こしたのは「帝王切開で何回もお腹を開けられているから、内臓を出した後に戻すやり方が雑で、おそらく押し込められたためだろう」と獣医師。「このまま放っておいたら遅かれ早かれ死んでいたよね」と言われたとのこと。急きょ手術を受けて、一命を取り留めたカノンちゃん。この時、星さんも「仮に私たちが引き取らなかったらどうなっていただろう」と、”運命の出会い”に感謝したといいます。
トラックが走る音も、リードを付けて外を歩くのも怖かった 臆病なチワワだったが…
術後、2泊3日の入院を経て再びおうちへ戻ったカノンちゃん。ここから周りの環境に慣れながら、星さん家族との関係を築いていくことが始まりました。
「当時何でも怖かったカノン。トラックが走る音も怖いし、ひもを付けて外を歩くのも怖くて。散歩するにも端っこに寄ってしまったり、怖くて尻尾を巻いてしまったり。最初は太陽や芝生の気持ち良さよりも怖さを増してしまう感じでした。実家で元野犬を18年間ほど飼っていましたが、その子とは家族のように仲が良くて一緒に遊んだりと楽しい思い出ばかり。だからこそ、ワンちゃんがいた方が子どもたちにとっても豊かな時間になるだろうと思っていたのですが…カノンを引き取ってみるとそうもいかなくて。
でも、それは生まれ育った環境がカノンを極度の臆病にさせたと思っています。覚悟を持ってカノンと向き合うことを決めました。少しずつ外に出ることをならしたり、怖がっている時は抱っこをして不安にならなくていいよと声を掛けたり。とにかく私たち人間はあなたに危害を与えるものじゃないよ、ということを見せていく作業に努めたんです。カノンのペースもありますから、基本は怖がらせないように穏やかに接することを心がけてきました」
根気よく臆病なカノンちゃんの気持ちを大切にしながら向き合ってきた星さんたち家族…お迎えして半年ほど経った頃、星さんと旦那さんにはカノンちゃん自らペロペロなめるなど少しずつ甘えるようになってきたそうです。さらに今では、散歩や階段の上り下りもできるようになったとか。このほか家族でキャンプに出掛けたり、駐在先のアメリカ・ニューヨークに連れて行ってもらったりと、カノンちゃんは楽しい経験も積み重ねてきました。
「時間の経過とともに経験を少しずつ積んでいくことが重要ですが、小犬じゃないのですんなりなれることは難しいかと思います。ただ、おはよう、よく寝たね、ご飯食べたね、よくトイレできたねとか…子どもに話しかけるように接してきました。こうした声掛けと寄り添いを続けることで、カノンも心を許してくれました。
ちょっと怖いなと思ったら私の足に飛び掛かってきて抱っこしろとアピールをします。私に抱っこされれば”安全”だと信頼してくれているのだと感じます。特に夫との関係がしっかりとした絆ができていて、いつも一緒に寝ていますね。カノンは、昼寝をしてご飯を食べて遊んで…毎日楽しそうです。家族がいる時はいつも笑っています。怖がりやさんではありますが、落ち着いていてとっても穏やかな子。これからも一緒に幸せになりたいと思います」
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2025年動愛法改正に向け、虐待されたペット「緊急一時保護」飼い主の「所有権喪失」など求める署名運動
星まりさんが経営する「R ETHICAL」は、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル(代表・滝川クリステル、以下クリステル財団)とともにボルネオ島の野生動物保護・生息域保全のプロジェクトを行っています。「オランウータンや象などをモチーフにしたジュエリーを一緒に作らせてもらって、販売した売上金をボルネオ保全トラスト・ジャパンという団体さんに寄付しています」とのこと。
また、クリステル財団では2025年の動物愛護管理法改正に向けて、オンライン署名サイト「change.org」にてオンライン署名活動を行っています。財団担当者は「今の法律では、動物を虐待して有罪や罰金刑を受けても、飼い主が所有権を放棄しない限り、ペットを連れて帰れてしまうという問題があります。そこで、『緊急一時保護』と虐待した飼い主の 『所有権喪失』、そして『行政による被虐待動物の保管』を求める署名を進めています。目標数は10万件以上、集まった署名は国会議員へのロビーイング活動等に活用しつつ、環境省をはじめ参議院議長、衆議院議長へ提出する予定です」と話してくれました。
「5年に一度!飼い主に傷つけられた動物を守れる社会にするため、虐待された動物の《緊急一時保護》と、虐待した飼い主の《所有権喪失》を求めます」