名物実況「捉えたぁぁぁ!」元フジ田中大貴アナのグッズ、オリックス愛溢れるデザインも…“捉え”られずにプロ野球あきらめた過去

小森 有喜 小森 有喜

元フジテレビアナウンサーで現在はフリーで活動する田中大貴アナ(43)が、代名詞的な野球実況のフレーズ「捉えたぁぁぁぁ!!」「逞しき猛牛軍団が蒼き波に乗る」をあしらった2種類のタオルを発売する。売上は全額寄付し、地元の野球少年のグローブ購入費に充てるという。フレーズに込めた思いを取材した。

「捉えた」言いすぎて怒られた!?局アナ時代

田中さんは2003年にフジテレビに入社。「とくダネ!」「すぽると!」などの番組でお茶の間に親しまれ、野球中継の実況としても人気を博した。18年に退社し独立。オリックス戦をはじめさまざまなスポーツ実況の仕事をしつつ、株式会社Inflight(インフライト)代表としてスポーツ関連の事業を手掛ける。

「捉えたぁぁぁぁ!!」は、打者が大飛球を放った時に出るフレーズ。「とら」を抑えた発音が特徴的だ。

実は局アナの若手時代に「捉える」「捉えた」という言葉を使う頻度が高い、と先輩に指導されたことがあったという。言葉の重複は避けるのがアナウンサーとしての基本だと教わり、それ以降は使いすぎないよう常に意識していた。

しかしフリーになってから、球場やSNSで野球ファンに「田中さんの『捉えた』の言い方が好き」と言われたのが転機になった。「だめなことだと思っていたけれど自分のクセを出してみよう、恥ずかしがらずに武器にしてみよう」と決めた。

ちなみに、今シーズンで最も印象的な「捉えたぁぁぁぁ!!」は、オリックス紅林選手が5月にほっともっとフィールド神戸で逆転サヨナラ本塁打を放った時のものだという。

捉えられなかった…プロのオファー断った過去

「捉える、って打者にとって1番うれしいことじゃないですか」と笑顔で語る田中さん。自身もかつて野球に打ち込んだ身だ。名門・慶應義塾大で3年時からベンチ入りし、4年春には4番打者としてリーグ本塁打王のタイトルを獲得した。青山学院大の石川雅規投手(現ヤクルト)や立教大の多田野数人投手(元MLBインディアンスなど)らから本塁打を放ち、注目を集めた。

それでも、大学の大先輩である高橋由伸さん(元巨人)からは「プロの第一線で活躍できる自信を持って初めて、プロに行きなさい」と助言されていた。

世代で頭ひとつ抜けていたピッチャーは、早稲田大の和田毅投手(現ソフトバンク)。田中さんは「和田毅から打つ」ことを目標に定めた。しかし直球の威力も変化球のキレも抜群で、まったく歯が立たなかった。4年生の春・秋リーグ戦いずれも最後の打者は田中さんだったが、両方とも和田投手から三振を喫した。

結果的に田中さんはプロ野球や社会人野球からのオファーを断り、アナウンサーの道を選んだ。「もし毅くんの球を『捉える』ことができていたら、違う人生もあったかもしれません。打者がボールを真芯で捉える難しさを知っているからこそ、実況をしていてもそこに着目してしまうのだと思います」と話す。

近鉄ファンもブルーウェーブファンも…フレーズにこめた思い

今回発売したタオルのもう1種類には「逞しき猛牛軍団が蒼き波に乗る」とデザインされている。「逞しき猛牛軍団」は大阪近鉄バファローズで、「蒼き波」はオリックス・ブルーウェーブ。合併して現在のオリックス・バファローズになり、消滅した2球団を表している。田中さん考案のフレーズだ。

田中さんはフリーアナに転身後、オリックスファンであることを公言した。兵庫県小野市出身で、幼少期から父とグリーンスタジアム神戸に通い、ブルーウェーブを応援した。イチロー、田口、本西選手ら鉄壁の外野陣や、名手・福良選手の身のこなしなどを自身のプレーの参考にしていたという。

19年からオリックス戦の実況をするようになった田中さん。京セラドーム大阪の実況席から、詰めかけたファンたちを見渡した。球団合併から15年たっても、近鉄とブルーウェーブの帽子やユニフォームを身につけている人がたくさんいた。「オリックスは紆余曲折を経て、色んなチームが混ざり合っている。さまざまなファンの思いを一つにするフレーズを実況で言いたい」と、思いついた。

勝利時の放送最後の締めコメントとして言っているうちにファンに浸透し、リーグ優勝した21年ごろから「おなじみのフレーズとして、みんなが楽しみにしてくれるようになった感覚がある」と話す。

売上は全額寄付で子どもたちのグローブに

田中さんは今年から、地元のスポーツ用品店コーベヤ(兵庫県三木市)と協力して地域の野球少年にグローブをプレゼントする企画を立ち上げた。そんな中、SNSなどで「名物フレーズをグッズ化してほしい」という声が届くようになり、タオルを製作することに。売上を全額コーベヤに寄付し、地元・北播地域の子どもたちのグローブ購入費に充てる。田中さんは「道具が高くて野球ができない、なんてことがないように少しでも力になりたい」と話す。

「実況の言葉は中継を見た人にだけ届くものだけれど、それがグッズというカタチになるなんて新しい感覚。こういう展開が実現したのもファンと地元の皆さんのおかげです」と感謝する田中さん。「もし球場で掲げてくれる人がいたら実況アナウンサー冥利に尽きます」と話している。

タオルは2種類とも2750円。現在コーベヤスポーツ三木本店で販売しているほか、オンラインショップでも販売予定。

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