『進撃の巨人』の名セリフは? 人生の大切なことに気づかせてくれる哲学的4選「これに救われた」

海川 まこと 海川 まこと

11月4日にテレビアニメシリーズの最終回を迎えた『進撃の巨人』。10年続いたアニメの完結に、ネット上にはファンから惜しむ声が数多く寄せられています。そんな本作の魅力のひとつとなっているのが多くの名言です。

「心臓を捧げよ」「なんの成果も!!得られませんでした!!」などインパクトのあるセリフやネタ化したものもありますが、今回は大切なことに気づかせてくれる名言を振り返ります。

「人と人が違うのはきっと こういう時のためだったんだ」(エレン・イェーガー)/コミックス18巻 第72話より

エレンといえば「駆逐してやる」というセリフの印象が強いですが、ハッとさせられる名言も残しています。

ウォール・マリア奪還作戦の前夜、久しぶりに食堂で和やかな時間を過ごす調査兵団の面々。明るく話し合う仲間たちのなか、エレン・ミカサ・アルミンの3人が会話している時に出てくるのがこのセリフです。

リラックスした雰囲気のなか、エレンは以前、ミカサやリヴァイのように強くなりたいと思いつつも、自分の非力さに妬みを感じていたことを語ります。しかしこれまでの戦いから、人はそれぞれの役割や自分にしかできないことがあり、それぞれが役目を果たすことでミカサやリヴァイは力を発揮できていると気づき、このセリフを発する心境にいたったのです。

他人に劣等感をもつことや、妬むことは必要ないと気づかせてくれる名言といえるでしょう。セリフに対して「自己肯定感が高まる」「すごい人にはなれなくても支えられる人になりたい」というファンの声があるように、前向きな気持ちにしてくれます。

「僕はここで三人でかけっこするために生まれてきたんじゃないかって」(アルミン・アルレルト)/コミックス34巻 第137話より

エレンの幼馴染であるアルミンは勇敢さと芯の強さを持ち合わせ、全編通して数多くの名言を生み出しましたが、このセリフは最終回でのターニングポイントとなりました。

始祖の巨人との最終決戦にて、敵に捕えられてしまったアルミンはジークと対話を始めます。ジークは「(人が)増えるために生きる」という価値観のなかで、生きる意味を見失っていました。そんなジークにアルミンは、人が増えるために必要ではない何でもないものにも大切な価値があることを、このセリフによって説きます。

このセリフによってジークの心を動き、地鳴らしを止めることにつながったといえるでしょう。

「些細な幸せがあればすべてが報われなくてもいいと思えた」「生きる意味は日常にあると気づかされた」など、ジークだけでなく視聴者の心も動かした名言。「幸せとはなにか?」とよく議論されますが、答えの本質は全てここにつながるのかもしれません。

「私達に見えている物と実在する物の本質は…全然違うんじゃないかってね」(ハンジ・ゾエ)/コミックス5巻 第20話より

このセリフは、捕獲した巨人に名前をつけ、さまざまな実験をおこなった結果を楽しそうに話すハンジに対し、エレンが「なぜ巨人を目の前にしてそんなに陽気でいられるのか?」と尋ねた時に発せられたセリフです。

巨人研究への異常な情熱から周りからは巨人好きの変人として扱いされるハンジ。しかし、普通の人であれば、恐怖の対象である巨人のことなど深く考えたくないところ、恐怖に負けず自分の無知と向き合い、理解を深めようとする姿勢は、ハンジの抱える皆を救いたいという使命感からくるものでしょう。

ネット上では「感情で物事を決めつけるのではなく客観的に考察することの必要性に気づいた」「こんな考え方ができれば、早くお互いを理解できるんじゃないか」など共感の声が続出しています。情報社会のなかで、偏った情報に踊らされずに真実を見極めるためにも、多くの人々が持つべき考え方といえます。

「まあせいぜい…悔いが残らない方を自分で選べ」(リヴァイ・アッカーマン)/コミックス6巻 第25話より

女型の巨人という敵に追われ次々に仲間が殺されるなか、このまま逃げるように命令されているものの、仲間を助けるために巨人化したいと考えるエレン。エレンの葛藤に気づいた兵士長のリヴァイがかけたのがこのセリフでした。

一見リヴァイは責任を放棄しているようにも見えますが、これまで自身の選択によって部下や同僚の死を多く経験し、誰よりも後悔を味わってきたリヴァイだからこその言葉といえるでしょう。

読者やアニメ視聴者から「この台詞に救われた」「何かを迷うたび思い出す」といった声があがっています。結果は誰にもわからない世の中、せめて自分自身が「後悔しないと思う道」を進みたいと思わせてくれる名言です。

   ◇   ◇

厳しい社会を生き抜いていくなかで、つい忘れてしまう大切なことを気づかせてくれる調査兵団の名ゼリフたち。アニメ版や漫画版の『進撃の巨人』をチェックする際は、各キャラのセリフに注目してみると、より面白さに深みが出るかもしれません。

◆海川 まこと(漫画収集家)手塚治虫先生作品から「葬送のフリーレン」まで、マンガやアニメをこよなく愛する中年マニア。好きが乗じて大手書店で勤務後、ゲーム会社で勤務。退職を機に、好きなだけマンガを読んだり、夜な夜なアニメを片っ端から見ています。

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