プロ野球・阪神タイガースが日本一となり、各地で盛り上がりが続く中、虎党のおっちゃんの行動がSNSで話題になっている。ショッピングバッグ5袋に、小分けの饅頭120セットを詰め、神戸市内の商店街で配り歩いていたという。のし紙には「祝 優勝」「阪神タイガース顧問 鈴木」の文字。中には、紅白饅頭ではなく、阪神にちなんだ「黄紅饅頭」が入っており、黄色の方にはロゴのようなトラの絵があしらわれていた。顧問と名乗る鈴木さんを直撃してみると…。
「近所のおっちゃんが勝手に紅白饅頭配っていた。経済波及効果を実感した」。X(旧ツイッター)に投稿したのは、神戸市灘区の魅力を発信する慈憲一さん。饅頭を受け取ったのは、阪神が日本一を達成した翌日の夕方。地元の水道筋商店街の中にある「灘中央市場」を歩いていると、八百屋で顔見知りの鈴木雅治さん(74)に会った。「これやるわ~」。手渡された包装を見て「顧問って何ですか」と突っ込むと、「いやまあ、顧問やしな~」と得意げ。聞けば、日本一を祝って、朝から饅頭を配り歩いているという。
中身は、近くの老舗和菓子店「美吉本舗堂」の饅頭。ピンポン玉くらいの大きさで、黄色はこしあん、紅色は白あんだった。Xに投稿すると、「大阪最高」「さすが大阪」「大阪には5万人くらい、自称・タイガースの顧問がおりそう」といった声が多く寄せられた。慈さんは予想外の大反響に、こう強調する。「大阪じゃないです!神戸!しかも灘区(笑)」
美吉堂本舗の担当者に饅頭について尋ねると…「トラの焼き印は、実は干支用なんです(笑)鈴木さんは、2003年の星野監督の優勝の時もたくさん買ってくれて配っていましたよ。阪神が勝つごとに饅頭用の貯金をしているみたいで」と話す。
38年前は銭湯貸し切りでビールかけ
地域の情報から鈴木さんの仕事場へ向かうと、すぐに会えた。シャツにジャケットを羽織った普通のおっちゃん。「いやあ、参った。自称とか付けとったらなあ。何か言われてなかったか?」。反響を少し気にしながらも、経緯を説明してくれた。「38年前は春日野道のさくら湯を貸し切ってビールかけをやったんやで。瓶は割れるから、缶でな。頭を阪神のマークに刈った人もおったわ。いや、18年前の優勝もやろか思ってんけど、廃業しててな。それで饅頭に変えてん」
祝い饅頭は毎年、リーグが開幕する頃に注文し、終盤にキャンセルしていたそう。今年は1週間前ほど前から準備。のし紙が販売されていなかったため、お年玉用のぽち袋で代用し、自作のはんこを手作業で押して包装紙に貼り付けていったという。「生まれる前から阪神ファンや。もう来年の饅頭も注文したで」と鈴木さん。2連覇に向けて、いち早く闘志を燃やしている。