昭和のこたつ、天板の裏は「緑色のゲームマット」だった? 現在も入手できるのかメーカー、家具店、量販店に聞いた

金井 かおる 金井 かおる

 昭和時代の家庭でよく見た、緑色の布が張られたこたつ板はご存じでしょうか。表面には木目や赤色などのデザインが施され、ひっくり返すと緑の布地が現れるというもの。昭和世代の人たちに尋ねると、「あったあった」「なつかしいなあ」「家族でトランプやカルタしたなあ」「布張りだから並べたカードがめくりやすかった」「大人たちがマージャンしながら年越ししてたの思い出したわあ」などの声が。今でも入手できるのか、調べてみました。

東芝「マージャン、ゲームに大変重宝」

 大手電機メーカー「東芝」の歴史や最新の技術などが学べる「東芝未来科学館」(神奈川県川崎市幸区)。同館担当者によると、東芝は1961(昭和36)年ごろから裏面に布が張られた「裏面ラシャ貼り」仕様のこたつ板を発売。当時、こたつ本体と天板は別売りでした。ラシャとは生地の種類の一種で、マージャン卓やビリヤード台、書道の下敷きにも使用されています。

 1964(昭和39)年発行の顧客向け商品カタログを見ると「裏面は丈夫な東レナイロン混紡ラシャ。熱がにげず、電気代もおトクです」とあり断熱効果をアピール。

 さらに同年、東芝が販売店に配った冊子「ご販売のしおり64東芝暖房器」には、10種類のこたつ板が掲載されており、そのうちの1つには「ラシャ面の塩ビ枠を普通品よりも高くしてありますから麻雀、ゲーム遊びにも大変重宝です」の宣伝文句が。残念ながら緑色のラシャ面が写った写真はありませんでしたが、天板からマージャンパイやゲームの小道具などが落ちないように、わざわざ囲いを高くした商品も売られていたことがわかりました。ラシャを使ったこたつ板は、1980年代にコルク材質などに変わるまで約20年ほど販売されました。

 他の大手メーカーにも問い合わせましたが、すでにこたつの生産を終了しており、資料や情報も残っていないことから、他社の動向は分かりませんでした。

「せめて天板だけでも」リバイバル商品作った家具店も

 マージャンやゲームができるこたつ板が市場から消えたことを知り、商品化を企画した家具店があります。1952(昭和27)年創業の「下村家具」(本社、奈良県北葛城郡)。同社は2015年9月、天然木の裏面に緑色の布地を敷した「天然木こたつ天板リバーシブル 麻雀・ゲームマット仕様」を発売しました。

 発売時の商品案内には「近頃、冬は家族や仲間とこたつで麻雀、トランプという定番の風景があまり見られなくなりました。調べてみると現在、昔ながらの天板の裏が緑のこたつはもはや作っているメーカーがありません。そこでせめて天板だけでもと裏が緑のリバーシブルタイプのこたつ天板を製作いたしました」とあり、「どうせなら長く使っていただきたい」との思いから、品質にこだわって天然木ケヤキ材を使い、国内のこたつ工場で職人が一つ一つ手作りしたといいます。

 税込み23800円で発売し、30個ほどが売れましたが、職人が引退したために商品は廃番になり「現在は取り扱いをしておりません」(同社)。

大手家電量販店「あえて昭和感出さない色」に

 大手家電量販店「ヤマダデンキ」を展開する「ヤマダホールディングス」(本社、群馬県高崎市)は2021年10月、「ゲームこたつ」(税込み16280円)を発売。リバーシブル仕様の天板は、ゲーム面はカードやチップが扱いやすいようにと紺色のベロア生地を使用。裏面は落ち着いた木目調です。

 同社担当者は発売のきっかけを「コロナ以降、家での娯楽が注目された中、こたつで遊べるボードゲームやトランプが気軽にできるこたつをという思いで開発しました」と説明。

 昭和時代とは違って紺色を選んだ理由は「緑にしてしまうと昭和感が出るため、あえてそれを避けるため紺色にしました」(同社広報担当者)。

 オンラインショップでは販売を終了しており、全国の店頭在庫限り。

     ◇

 家電メーカーが「緑色のラシャ面がマージャンやゲームなどにも使える」とアピールした背景には、当時のマージャンブームも関係しているといえそうです。1960年代、日本は第2次マージャンブームの真っ只中でした。1964年、和歌山県のメーカーが象牙にかわる素材としてプラスチック製麻雀牌を開発し、大量生産を開始。文化面では阿佐田哲也の連載小説「麻雀放浪記」が大ヒット。1970年代に入るとマージャン専門誌も創刊。マージャンは身近な娯楽として定着し、家族で卓を囲む家庭も。その後、子どもにも分かりやすいと人気商品になったのが1980年発売の「絵合わせゲーム ドンジャラ」(バンダイ)でした。

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