ひとつの土地にふたつの住所? 半世紀にわたる混在に終止符打てるか…なぜこんなことに?

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 福知山市は一部地域で住民票の住所「字名」と郵便番号にひも付く住所「町域」の二つの住所表記が存在する問題を巡り、表記を統一するかどうかを議論する検討会を設置した。住民は以前から公的文書に使用する「字名」と、郵便物や宅配で利用する「町域」を使い分けてきたが、分かりにくさを指摘する声が後を絶たない。市は検討会の意見を踏まえ、本年度内に方針をまとめる。

 市は法務局が定めた地番の「字名」を採用している。一方で1968年に導入された郵便番号制度では、旧郵政省が小字や自治会名を基に「町域」を定めたため二つの住所が生まれたという。

 市内326自治会のうち「字名」と「町域」が異なり、二つの住所がある自治会は179(約3万9千人在住)で半数を超す。中でもJR福知山駅周辺に広がる「字天田」には20自治会が存在し、駅を挟んで飛び地にもなっており住所表記が複雑だ。2006年に合併した夜久野町でも46自治会のうち、8割を超す39自治会で二つの表記がある。

 市には、転入してきた住民から「郵便番号で検索したら違う住所が表示された。どちらの住所が正しいのか」と戸惑う声が多く寄せられているという。

 市議会でもこれまでから「分かりにくい」との指摘が出ていた。ただ郵便番号にひも付く住所に統一した場合、市は住民票やマイナンバーカード、国民健康保険被保険者証などを書き換えなければならず、市民も電気やガス、金融機関などの変更手続きが必要になる。市はシステム改修にかかる多額の費用や、古くから残る「字名」の消失を理由に対応を見送ってきたという。

 昨年12月の市議会一般質問で改めて問題視する意見が出て、市は「地域の意見と実情を知る必要がある」として検討会の設置を表明していた。

 9月下旬に発足した検討会は専門家や住民代表を含め5人で構成する。土地家屋調査士として委員を務める足立一成さん(44)=同市猪崎=は「メリットとデメリットを理解した上で、次世代に向けて整理が付けられるよう方向性を示したい」と話している。

 市は年内にも二つの住所がある地域を対象に市民アンケートを実施し、住所の在り方について考えを聞く方針。大橋一夫市長は「住民には住所の使い分けで不便をかけてきたが、住所表記の変更にも多くの負担を強いる。アンケートを踏まえニーズを把握したい」と話している。

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