「プリンセスになりたいだけの平凡な男子です」ーー23歳男性がディズニーのプリンセスになる夢をかなえ、SNS上で注目を集めています。
ディズニー作品「リトル・マーメイド」の主人公、人魚のアリエルに扮したのは「にこ」さん。「小さい頃、ズボンの片側に両足を突っ込んで、アリエルの真似をしてた。親にバレるのが怖くてこっそりと...そんな僕が23歳にして人魚のアリエルになれるなんて、こんな奇跡ありますか??」。人魚の足ひれに赤いロングヘアー、何よりとびきりの笑顔でアリエルを再現しています。
東京ディズニーシーの期間限定イベント「ディズニー・ハロウィーン」でのひとコマ。同イベントではディズニーキャラクターにフル仮装することが許可されており、にこさんは入念な準備を重ね、10月中旬に参加しました。
当日撮影した写真を自身のSNS(@nicodisney_)に投稿すると、8万のいいねを集めるほど拡散。ユーザーからは「笑顔がすてき」「キレイなアリエルだと思ったら男性の方だったんですね!」「やばい…かわい過ぎる」「完成度高すぎ」「夢はかなうんですね」などの感想が続々と寄せられています。
アリエルのため…英語を猛勉強し留学まで
にこさんに話を聞きました。
──アリエルに魅了された理由は。
「僕が幼稚園児の頃、リトルマーメイドが好きな母がよく映画を見せてくれたり、アリエルのフィギュアを飾ってくれたりしたことがきっかけです。もともとファンタジーが好きで、自由帳に絵を描くのが好きな少年だったので、人魚という存在そのものにあこがれを抱いたのだと思います。特徴的な赤髪に美しい緑のヒレを持つ可愛らしいアリエルが、美しい海の世界を自由に泳ぐ姿にときめいたのを覚えています。多分、女の子たちがアリエルにあこがれる理由となんら変わらないと思います。だって最強にかわいいですもん、アリエル」
──アリエルに近づくため、どんな努力を。
「英語を話せるようになる努力、かわいくなるための努力、アリエル仮装を成功させるための努力の3つが大きかったと思います」
「吹き替えだけでなく、アリエルが感じた本当の心情を知りたいと思い、英語を学ぶ努力をしました。外国語学部の大学でひたすら勉強し、アメリカの州立大学に交換留学をしたり、休学をしてフィリピンで働いたりしたこともあります。この時にいろんな価値観を学び、より自分らしくいられるようになりました。英語力もそれなりに伸び、入学時にはTOEIC380点でしたが、卒業時には945点まで成長しました。もはや意地ですね(笑)。映画でアリエルが発する英語表現や文法から細かな心情を感じ取ることが出来るようになりましたし、パークにいるアリエルともお話し、『小さい頃からあこがれているんだ』と自分の言葉で気持ちを伝えられるようになりました」
「自分らしさを表現できず普通の男子として生きていた自分を変えるために、メイクやファッション、美容についてたくさん勉強しました。女の子の友達にメイクの手順を聞いたり、洋服のブランドを調べたり、化粧品検定の勉強をしてみたり。YouTubeも見て何度も何度もメイクの練習を重ねました。『男では限界がある』と自分に幻滅してしまったこともあります。でも、少しずつでも努力を続けることが大事だと自分に言い聞かせ、やれることを探しました」
「ディズニー・ハロウィーンでのアリエル仮装という目標のため、ひたすら自己分析とメイクを研究し、トライアンドエラーをくり返しました。例えば、アリエルは男性の僕とは骨格や顔の形も大きく異なります。今回は下唇のリップだけ広めに塗ることで、男性らしい面長の印象を和らげ、柔らかい印象を出そうと試みました。あえてアリエルと違う表現をすることが、僕の場合はよりアリエルに近づけると思ったんです。自分という素材で最大限アリエルが表現できるようにがんばりました。もちろん普段からメイクを研究していたからこそ出来たことだとは思いますが、最後の最後まで努力は惜しみませんでした」
──アリエルを再現できた今の気持ちは。
「アリエルになってマーメイドラグーンに足を運んだ瞬間からずっと幸せで、数日経った今でもまだ頭がふわふわしています。女の子でない自分はアリエルを目指す権利すらないと思っていたので。不可能だと思った夢がかなったなんて今でも信じられないです。今までにあった苦悩や葛藤、努力の日々が全て報われるほど幸せでした。この経験があれば、今後の人生でどんなことでも乗り越えられるような気さえします。親にすら打ち明けられずに、こっそりとアリエルのまねをしていた幼い頃の自分に『恥ずかしい夢なんてないんだよ』と伝えてあげたいです」
入社式も「レディースのスーツで出席しました」
──社会人と聞きました。普段はどんな服装を。
「普段の生活や仕事の時にも、自分らしい格好をしています。洋服は全てレディースが基本です。絶対にメンズは嫌だというわけではありませんが、レディースの方が絶対かわいいので(笑)。会社の入社式もレディースのスーツで出席しました。昔はスカートを履く時にソワソワしていたのですが、アリエルを目指す過程で徐々に自信がつき、今では躊躇なく履けるようになりました」
──SNSで大きな反響です。
「友人から『知る限り日本のディズニーで人魚のアリエル仮装をした男性は前例がない』と聞いていたので、良くも悪くも注目されてしまうのではないかと覚悟はしていたのですが、信じられないほどたくさんのあたたかい声を頂けてうれしく思っています。また、時代がより良い方向に動いているなと改めて認識しました」
「社会に根付いた固定観念がすぐに消えるものではないのも事実で、自分らしさと向き合えない人はまだまだたくさんいます。アリエルになった男の子がいるという話題はすぐに忘れ去られると思いますが、かなわないと思われた夢がかなったという事実は、自分らしさを大切にする人々にとって必ず意味のあることになると信じています。性別や年齢など関係なく、誰もがあこがれた夢を追いかけていいという意識が社会全体に広まった時、それこそが本当に生きやすい世の中なのだと思います。そんな意識が浸透する助けに僕の投稿がほんの少しでもなれていたら、これ以上に幸せなことはありません。プリンセスは自分が幸せになるだけでなく、幸せを分け与える存在でもありますからね」
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にこさんのSNSを見ると、プロフィル欄に「プリンセスになりたいだけの平凡な男子です」とあります。これにも意味があると教えてくれました。
「僕が自分を普通の男性だと思っているからです。スカートを履きたければ履いたらいいし、その日の気分でかっこいいジーンズを履けばいいし、メイクはしたいようにすればいい。人に迷惑をかけなければ、もっと自分の気持ちを大切にしていいと思います。そこに男女も年齢もありません。全ての人が自分らしく生きられることが大事だと思います。そういう意味では、プリンセスになりたい男子っていうのは、僕の考えでは至って平凡な存在だと思うんです」(にこさん)