多頭飼育崩壊から保護されたキジシロ猫は猫エイズ陽性 「お利口さんのあなたとずっといたい」 預かりボランティアが飼い主に

松田 義人 松田 義人

多くの行き場を失った猫を保護し、新しい家族へのマッチングを行う団体・一般社団法人LOVE & Co. (ラブ・アンド・コー。以下、ラブコ)。同団体のオフィスには保護猫たちが過ごす部屋があり、ここでスタッフと一緒に新しい家族との出会いを待っています。

新しい里親さんが見つかるまでの間は、保護猫たちはパッケージモデルとして雑貨制作に参加し、その収益は猫たちの生活費として賄われています。キジシロ柄のりっぱという、ちょっとワイルドにも映る猫は、クッキー、パウンドケーキなどのパッケージモデルとして人気です。

ただし、ラブコの活動を応援する人たちの間では人気のりっぱですが、保護されるまでは過酷な生活を送ってきた過去がありました。

高齢男性の借家から保護された10数頭の猫たち

りっぱは元々、生活保護を受けながら生活していた埼玉県在住の高齢男性のもとで暮らしていました。その男性は「野良猫たちがかわいそうだろう」と不妊手術をしないまま、複数の野良猫を家の中へ迎え入れ過ごしていました。不妊手術をしなかったせいで、男性の家で過ごしていた野良猫たちは続々と子猫を産み、気づけば10数匹にも増えてしまいました。

やがて、この借家の取り壊しが決まり、男性も立ち退きを迫られることになったわけですが、行き場を失ったのはこの10数匹の猫たち。これを知った東京の保護猫団体がいったん全ての猫をレスキューし、その後、きょうだい猫と一緒にラブコが預かることにしたのがりっぱでした。

保護当初、まだ2歳ほどだったりっぱですが、動物病院での検査の結果、FIVキャリア(猫エイズ)陽性が判明。猫エイズは、オス同士のケンカで感染することの多い感染症ですが、免疫が低下しないよう気を付けて生活すれば、発症せずに寿命を全うできることもわかっています。

しばらくの間、ラブコ・オフィスの保護部屋で暮らすことになりましたが、そのややワイルドなルックスに反し、他のキャリア猫とも仲良く過ごせる穏やかで優しい性格の猫でした。生活環境は良いものではなかった一方、前述の高齢男性からかわいがられていたこともうかがえました。

預かりボラさんの家を探検「僕の居場所はここ?」

2023年になり、りっぱは保護当初から悪かった右目の診察のため動物病院へ行きました。獣医師の診断によれば、過去に他の猫とケンカした際に、まぶたの内側に怪我を負ったせいで、涙の処理ができないとのこと。そのため、定期的に目の周りのケアが必要ですが、ここでもりっぱは立派でした。嫌がらず、おとなしく目のケアをさせてくれました。穏やかである一方、とてもお利口さんで我慢強い一面も併せ持っていることがわかりました。

りっぱは、一定期間オフィスの保護部屋で過ごした後、預かりボランティアさんの家に引っ越しすることになりました。引っ越し当初こそ新しい環境にドギマギする一方、ごはんをしっかり食べるなど順応性の高さも見せてくれました。

数日後には家の中の探検を始め、自分の居場所探しをするなど、たくましさも見せてくれるようになりました。

「本当の家族にしたい」と預かりボラさん

そんなりっぱの様子に預かりボランティアさんは「このままりっぱを、本当の家族としてうちで迎え入れてあげたい」とラブコスタッフに申し出てくれました。成猫でFIVキャリアがあると、なかなか譲渡先が決まらないことが多いものですが、これまでにも多くの猫のお世話をしてきた預かりボランティアさんなら安心です。もちろんラブコのスタッフは、その思いを受け快諾しました。

これまで辛い過去を背負ってきたりっぱですが、その分を取り戻すべく、ずっと幸せに過ごし続けてほしいと願うばかりです。

一般社団法人LOVE & Co.
http://love-and-co.net/

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