「日本一、雑草の少ない中学校にします!」
京都市左京区の高校生がこの夏、中学の生徒会選挙に立候補した際に掲げた公約を2年越しに実行した。
助っ人に呼んだのはなんとびっくり、あの動物。友だちも先生も目を丸くした「メェ~案」の成否は?
洛北高1年の高橋曖志さん(16)は左京区の高野中に在学した2021年に生徒会役員選挙に立候補した。
生徒会役員になって何がしたいのかを考えた時、ぽんと頭に浮かんだのが校内の草むしりだった。
高野中のグラウンド周辺や校舎裏には当時、雑草がぼうぼうと茂っていた。高橋さんは運動をしたり、遊んだりする時にそれが邪魔で仕方なかった。
「どうせ草むしりをするなら、どこの学校もやっていない方法でやってやろう」
そう思って見つけたのが、ヤギを「起用」した除草法だった。
インターネットで調べると、それは「効果がすごい」などともてはやされ、草を食べるヤギのレンタルをなりわいにする人たちが実際に存在することも判明した。
これなら公約としてのインパクトは十分。薬剤や草刈り機を使わず「安全」で「エコ」なところも気に入った。
高橋さんは選挙活動で「ヤギを連れて来て、雑草が日本一少ない学校にする」と訴えた。
高橋さんのアイデアは話題となり、友だちや先生も「面白そう」「やってくれたらうれしい」と応援してくれた。
高橋さんは生徒会役員に選ばれると、早速、ヤギのレンタル業者に連絡を入れた。
だが、思わぬ壁が立ちはだかった。ヤギを車で運搬するのに多額の費用がかかり、予算をオーバーすることが判明したのだ。
結局、高橋さんは在学中に公約を果たすことができなかった。
せめてもの気持ちで「人力」による草むしりに汗を流したが、心はすっきりしなかった。
しかし、中学卒業後に事態は思わぬ展開をたどる。
中学時代の同級生の保護者がヤギの飼育者と知り合いで、紹介してもらえることになったのだ。
高橋さんが飼育者に電話すると、たまたま飼育地の雑草が不足していて、ヤギが腹を空かせている絶好のタイミングだと分かった。
話し合いの結果、少額のお礼だけでヤギ2頭を借り受けられることになった。
高橋さんは高野中の許可を得て、8月2日に念願の公約を実行。友だちや教員ら約20人に見守られながら、連れてきたヤギ2頭に雑草を食べさせた。
ヤギは日差しの厳しい時間帯に休憩したりするので、レンタル可能な1日だけで校内の雑草をきれいにすることはできなかった。
それでも高橋さんは「アニマルセラピーとしての効果に着眼すれば十分な成果」と手応えをつかみ、「もう無理かもとあきらめかけていたので、本当にうれしい。こんなチャンスをもらえて、協力してくれたみんなには感謝でいっぱいです」と笑顔を見せた。